会長はメイド様!
□かくれんぼ
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隠れて
見つかって
隠して
また出てきてしまう
そんな不安定な私の心
何故取り乱される...
以前はこんなんじゃなかった
しっかりしろ私
生徒会長として机に座り、今は仕事に追われている
目の前の仕事を無心で行い、それが終わればメイド・ラテに移動して仕事、それが終われば家に帰り勉学の予習・復習...そしてまた学校に行き生徒会の仕事
毎日十分過ぎるほど充実し、忙しく満たされている感覚が好きだ
たまにキャパを越えてしまうこともあるがな...
そんな事を書類に目を通しながら考えていて、美咲は小さく溜め息を吐いた
美咲の心を占めるのはあの変態宇宙人のこと
毎日十分過ぎるほど充実し、生徒会長としての勤めも学生の本分もメイド・ラテの仕事にもいつも全力を注いでいた
なのに最近は何故かぼんやりとして集中できない
今日の授業中も外を見上げて溜め息をつくしまつ
思い出すのは碓氷の笑った顔
嬉しそうに、困ったように....笑う
その表情
何でこんなにあいつの事なんか考えるんだ...!!!
誰も居ない生徒会室
無心で仕事をこなす美咲のペンを走らせる音だけが響くなか、ガラリと扉が開いた
「会長〜v...ってあれ?」
おかしいなぁ、とドアの所で碓氷が立ち止まる
美咲がいるはずの生徒会長の机には美咲の姿はなく、碓氷はそれを不思議に思ったのだ
美咲は扉が開くとともに慌てて机の下に隠れた
息を潜めて高鳴る心臓を抑えて...
今の美咲には碓氷は避けたい存在だ
そんなことを知ってか知らずか碓氷は楽しそうに机へと足を進める
「机への上に書類出しっぱなして...美咲ちゃんは何処に行ったのかなぁ?」
顔を見なくてもニヤニヤと笑う碓氷の姿が簡単に伝わってくる
「珍しいなぁ〜、会長が散らかしたまま席を立つなんてねぇ」
机の下に隠れている美咲のすぐ側に碓氷の足が来た
「不用心だとは思わないのかな?会長v」
机の下をヒョイと覗かれて、隠れていた美咲は碓氷とバッチリ目が合ってしまい、美咲の肩がビクンと跳ねる
「何でそんな所に居るの、会長」
ニヤニヤと笑って...私が隠れていることくらい分かりきっているんだ
「つ、机の点検をしてたんだ」
会長たるもの自分の身の回りのものはしっかりと管理できないとならないからな、と少々上擦りながら早口で答える
「へぇ、流石会長。」
絶対にそうは思ってないだろうという口調で受け流し、碓氷の興味は次へと向かった
「で、何で隠れたの?」
「っ!!お前は本当嫌みな奴だな」
急に話題を核心に突かれてまたも美咲の肩が大きく跳ねた
しかし碓氷はそんな美咲を真っ直ぐと見据え、強い視線を緩めることなく問いただす
「で、何で」
「だ、だから隠れてなんか....」
あまりの強い視線に心が見抜かれそうで視線を逸らす
それでも伝わってくる碓氷の「視線」
視線のぶつかる顔が熱くなる....
その理由を美咲は知らない
この感情も、高鳴る心臓も.......
「だぁぁあああ!!!!」
「?」
突然美咲が声を上げるものだから碓氷はちょっと驚いて目を丸くした
「だからお前は苦手なんだ!さっきから何なんだ穴が空くほど人のこと見やがりやがって!!何でそんなんでいちいち私が緊張しなきゃならないんだっ!!!理不尽じゃないか阿呆碓氷!!!!」
真っ赤な顔をして碓氷に文句を言い近くにあった筆箱を投げつけ廊下へと駆け出した
「............流石鮎沢」
投げられた筆箱をキャッチした碓氷は堪らず吹き出した
あんなに俺の事意識してるって口にも態度にも出してるのに自覚無いなんて....
本当に面白すぎる
「苦手....ね」
美咲の筆箱を机に戻しながら軽く溜め息を吐き、美咲が走って行った廊下へと歩き出した
きっと彼女は屋上へ続くドアの前でまた隠れるようにしゃがみこんでいるだろう...
何で俺に見つめられて緊張するのか
その答えを自覚するまで、隠れんぼは続くんだろうね
さぁ、Let’s play 隠れんぼ
終わり