NOVEL

□第六章 a heartwarming
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「アキト!」

アキト「ん?…フローラか」

フローラ「私じゃいけないみたいな言い方ですね?」

アキト「そういう意味じゃないよ」

フローラ「まあ、いいけれど。ファズさんがご飯の用意が出来たそうですよ」

アキト「あ、ほんと?俺、もう腹減りすぎてやばいんだよ」

フローラ「ふふっ、アキトらしい」



あの日、俺がこの世界に来て、
俺はこの世界の現実に絶望した。

何もかもが、
絶望の淵に立たされていた。

勇者の末裔だと、急に言われても理解出来るはずがない。
だが、力がある者だとわかった今でも、何も出来ない自分に、
何故、此処にいるのか、
何故、自分は存在しているのか、と、
問い続けていた。


ファズ「そうだ、アキト」

アキト「ん?」

ファズ「アンタ、これからどうするんだい?」

アキト「え?…」

ファズの急な問い掛けにアキトは戸惑った。

フローラ「確かに…アキトは勇者の末裔ってわかったんですもんね」

ファズ「確実な可能性が高いからねぇ、」

アキト「…」

二人の言葉に、アキトは何も答えることが出来なかった。
自分は勇者の末裔、そのため、この世界に来た、はずだった。


だが、実際は証拠があるわけでもない。
アキト自身は何も知らない。


アキト「……」

アキトは返す言葉がなく、黙ってしまった。
この沈黙を破ったのは、フローラだった。
静かだが、しっかりとした意志を持っているような。
そんな、少し哀しげな声で言った。

フローラ「…ここからなら、帝国城下町に行くべきですよね」

ファズ「フローラ…」

フローラ「アキトが勇者の末裔なら、今のこの世界を救えるのも、アキトだけですよね?」

フローラはファズとアキトを見つめて言った。

フローラ「なら、アキトは世界を守るべきです」

フローラは強い確信のような、何かを持ったように言った。

フローラ「自分勝手な発言なのはわかってます。でも、今、この世界はもうすぐ破滅する…なら、救いたい…救って欲しい!」

アキト「フローラ…」

アキトはフローラの強い想いを聞いて動けなくなった。
フローラがこんなに強く主張すると思っていなかったから。


アキト「…そっか、そうだよな…オレに出来ることをするべきだよな!」

フローラの強い意志を聞いたアキトは悩んだ。
悩んで、悩んで、自分の中でしっかりと決断を出した。
まだ躊躇いはあった。
自分に世界を救う勇者であることなど出来るのか、戦いは愚か今までの世界でケンカすらもあまりすることはなかった。
そんな自分が戦い…いや、殺し合いに参加し生き残れるかと。
故にアキトは不安でいっぱいだった。
それでもやらなければならない、そう思った。

アキト「よし!フローラ、帝国城下町までの行き方を教えてくれよ」

フローラ「は、はいっ!」

アキトは笑顔で言い、フローラは最高の笑顔で答えた。

ファズ「ちょっと待ちな」

ふいに声がし、ファズに引き留められた。

アキト「ファズさん?」

ファズ「帝国城下町くらいまでならエリスを使えば着くだろう?」

フローラ「あ、そうか…まだエリスは残ってましたね!」

アキト「エリス?」

アキトは聞き慣れない単語に首を傾げ、二人の会話に全く着いていけなかった。



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