短編小説
□過去拍手
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「元就様」
聞こえるか聞こえないくらいの小さな声でそう呼べば、不機嫌そうにこちらを向く愛しいあなた
「なんだ」
そう言ってまた向こうを向いてしまう。
あぁ、そんなに……
「太陽……いえ日輪がそんなにお好きですか?」
そう問えば今度はこちらを向かずに
「むろんだ」
「私は嫌いです」
間髪いれずにそう返せば、勢いよくこちらをむいて
「何故だっ?」
その顔は信じられないとでも言うように、目が大きく見開かれていた
(あぁ、やっと私を見てくれた………)
以前のあなたならこんなことを言う私を、すぐさま切り捨てただろうに、いつからこんなにお優しくなられたのかしら
「日輪はすべてを照らしてはくれませんから」
「な…に?」
怪訝そうな顔をしてじっとこちらを見ている。
きちんと顔を合わせて話すのはとても久しぶりな気がして、ふっと小さく笑みがこぼれた
「日輪はすべてを照らしてはくれませんでした。私を……私のすべては闇に包まれているのです」
そう言って笑う。上手く笑えているか自信がない。
なにせこの話はとても辛くてとても悲しい………私の過去だから。
母親からも父親からも愛されず、暗い部屋に一人ぼっち
(ダメだ…泣きそう)
目頭が熱くなって涙が溢れそうになったとき、フワリと突然何か温かいものが私を包んだ。