短編小説

□せめて夢の中では
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「ゆーきーむーらー」
 
 
愛しい人の名前を呼び続けて早数十分。
 
 
いつもならすぐ返事をして走って来てくれるのに…
 
 
「佐助も来ないし………」
 
 
はぁ…とため息をついてその場に座り込む。
 
 
数十分叫び続けたうえに重たい着物を着たまま探していたせいか疲れてしまった
 
 
 
「ぜーんぶ、幸村のせいだ」
 
 
(喉痛いのも足が重いのも………泣きたくなるのも全部幸村のせいなんだから)
 
 
 
 
 
俯いたまま静かに瞳を閉じる。
 
 
昨日は久しぶりに遅くまで起きていたためか、疲れた身体に心地良く吹く春の風が手伝ってすごく眠い
 
 
「風邪ひいたら幸村のせいだ」
 
 
怒られたら全部幸村のせいにしてしまおう。
 
 
熱が出たら幸村に看病してもらおう
 
 
 
「幸村の………馬鹿」
 
 
 
そう呟いたあと私は意識を飛ばした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
―せめて夢の中では―
 
 
(愛しい貴方と供に居たい)
 
 
 
     END
 
 
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