短編小説

□過去拍手
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それが貴方だということに気付いたのは数秒たってから……
 
 
「も……となり…さま?」
 
「そなたがどんな辛い過去を持っているのか我は知らん。…だから無理に日輪を好きになれなどとは言わん」
 
 
その言葉を聞いて、まるで何かが壊れたかのように私は泣いた。
 
 
泣いて、泣いて、泣いて、これでもかってほど泣いた。
 
その間元就様は何も言わずただ抱きしめてくれて、時折背中を撫でてくれた。
 
 
まるで、小さな子供をあやすように優しく。
 
 
 
 
私が泣き止んだのは、もう日が暮れる頃だった
 
「もうよいのか?」
 
コクリと小さく頷くと「そうか」と言って緩く私の頭を撫でた。
 
今日の貴方はどうしてこんなに優しいのか、…また泣きそうになるのをぐっとこらえ、今度こそきちんと笑い
 
「ありがとうございます」
 
と言えば、何故か元就様は頬を少しだけ染めながら
 
「その…なんだ。日輪がそなたを照らさぬなら、…我がそなたを照らしてやる」
 
「…え?」
 
一瞬、何を言われたのか解らなくて、マヌケな声を出してしまった
 
「聞こえなかったのか?我がそなたの日輪になってやると言っておるのだ」
 
「え?…えぇ!?」
 
その言葉の意味を理解したとき、私は自分でも解るほど顔が真っ赤になっていた
 
「不満でもあるのか?」
 
「い、いえっ!滅相もございません!」
 
即答するとあなたはニヤリと笑った。
 
 
 
 
 
 
―それは温かな春の日に―
 
 
 (貴方ならきっと私のすべてを照らしてくれる)
 
 
     end
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