エデンパラレル

□月と太陽
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 いつも思う。月はまるで、君みたいだ。


 暗闇の中で相模は目を覚ました。目を開けると、寝る前は自分の腕枕で寝ていたはずの佑輔がいない。
 がばっと身を起こすと、窓辺に立つ人影。
「あれ、相模クンも起きちゃったの?」
 無邪気に笑う佑輔に、相模はほっとした。佑輔は突然いなくなるから、時々不安になる。
 相模に借りたシャツだけを身につけた佑輔は、窓辺で空を見ていたらしかった。
 佑輔にはサイズが大きく、袖がぶかぶかだ。細い素足が裾から覗き、月光に晒される。
 ベッドを下り、上半身には何も身につけず、ズボン一枚で相模は佑輔の隣に立った。
「ちょっと目が覚めちゃって、なんとなく月見てたんだ」
「月? ああ、今日は満月だっけか」
「うん。まん丸でまるでおまんじゅうみたいだよねー」
「…ヨダレ出てるぞ、ユウ」
 にへーと笑う佑輔。本当に食欲旺盛なちびっこだ。この体のどこにあれだけの量が入るのやら。
 相模は佑輔を後ろから抱きしめた。
 温かいぬくもり。髪の匂い。やわらかい素肌。どれもがいとしくて、相模は佑輔の首筋に口づけた。
 佑輔は抱きしめる相模の手にそっと触れて、月を見て微笑む。
「…ねぇ、相模クン? ボクね、ずっと思ってたんだ。月って相模クンみたいだなって」
 相模が顔を上げる。
「月ってずっと同じ向きをボクたちに見せてるでしょ? 絶対に裏側は見せてくれないの。傷だらけの背中を隠すように」
 ぴくりと、相模の手が震える。構わず佑輔は続けた。
「いつも同じ顔だけ見せて、本当の、傷ついた姿を見せない…それが相模クンに似てるなって。
 夜にだけ出てきて、その輝きをあまり人に見られることなく沈んでいく。なんだかそれってさみしいよね」
 佑輔はさみしそうに微笑んで、相模の指に自分の指を絡めた。沈黙が落ちる。
 しばらくして、相模が絡んでいる佑輔の手を握りしめて、無表情で言った。
「――だったら、お前は太陽だな」
「え?」
「誰にでも明るい笑顔を振りまいて、人一倍輝いてる。いつだってあたたかく見守ってくれる、ユウは…太陽みたいだよ」
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