エデンパラレル

□掴みし腕、叶うならばその心まで
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 ダイニングから出ていくころんと紗雪の背中を見ながら、相模はくすくすと笑った。明らかに反発する二人がおもしろい。 
 けれど、やっぱり女は嫌いだ。相模は食器を片づける響の背中を見やった。
 響の家に来るのは久し振りで、私服の響を見るのもいつ振りだろうか。
 響らしいシンプルで大人びたデザインの服。
 あんな服を着るから、実年齢より上に見られるのだ。ただでさえ大人びた顔立ちなのに。
「それで? 本当に何しに来たんだ?」
「だからお前の様子を見に…」
「俺はお前に言われた通り、高天を誘った! だが、お前も来るなんて聞いてないぞ!」
 振り返った響に、相模は一瞬目を丸くしてから嗤った。
「言ったらお前、反対するだろ? 自分の目でころんの様子を確認したかったんだよ。俺の思惑通り、ころんはすっかりお前にほだされてるな」
 言い返せずに、響はむすっとして食器を洗い始める。
 本当に、ころんは響に夢中だ。――ムカつくほどに。
 響のどこがいいのか。あんな仏頂面で、口下手男の。
「ほーんと、どこがいいんだろうな…」
 頬杖をついて、相模はぼそっと呟いた。その視線はずっと響に注がれたまま。
 どこがいいのか。それは、自分にも言えること。どうしてか、響のことが気になってしょうがない。
 響を慕うころんや、響が大事に守ろうとしている麗美に嫉妬するほど。
(まさか響を好きになるとは思わなかったぜ。昔の俺が知ったら驚くなー)
 そもそも、仲良くなるとすら思わなかった。あいつの第一印象は『お近づきになりたくないタイプ』だったから。
(なのに、今じゃこれだもんなー。人生分からないもんだよな)
 飲み干したリムルティーのカップを置いて、自嘲するように笑う相模。
「紗雪までいたのは予定外だが、予想範囲内ではある。このままいけば簡単にころん(あのおんな)を陥とせる。
 ふふ、楽しみだな。ころん(あのおんな)が陥ちて、毀(こわ)れた時の顔が」
 毀れればいい。ころんなんかに、響は渡さない。毀して、二度と響に近づかないようにしてやる。
 そこに、食器を洗い終えた響が戻ってきた。
「相模……もうそんなことはやめろ」
「ん?」
「そんなことをしてなんになる! お前のためにはならないぞ!」
 真剣な顔で詰め寄ってくる響を、相模は目を瞠って見つめた。
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