「……アッシュと、ケンカした」 ベッドに横になったまま、ぼそりとルークは呟いた。 「ん、そっか」 ガイはぽんぽんとルークの頭を慰めるように軽く叩いて、思考はケンカの原因を探りながらも、表情は嬉しげだった。 こういう場合は大抵、 「だから今日はガイのとこで寝る!」 ルークは自分の家に泊まりに来るからだ。 なので、こういうきっかけを起こしてくれるアッシュを心の底では感謝していた。 (―ただ。 それと同時に、) …ドスドスという足音が聞こえてきた。 誰かが、ファブレ家の階段を 最早走っているというスピードで上がってくる。ルークの部屋にその人物は現れ、窓越しにこちらに怒声を発する。 「この劣化品がっ!!」 ルークの兄であるアッシュだ。 (毎回このアッシュの喧騒が凄いんだよな…) ガイは苦笑する。 「おい!またテメーはソコにいんのか!帰って来やがれこの屑がっ!!」 「やだ!! 今日はガイんトコで寝るんだからな!」 ルークは体を起こしガイに抱きつく。 「ふざけるな! 相手の都合ってのもあるだろーが!」 「俺は別に構わないぜ? 親もいないのはアッシュも知ってるだろ」 「おまえには聞いてねぇッ いいから早く戻って来い!この出来損ない!!」 ダメな理由が、言っている事と矛盾している。 言っている本人は気付いていないが。 要するにアッシュは、 ルークを自分以外の、他人のところへと渡すのが嫌なだけ。 (素直に言えば良いのに…) そう思っていても、ガイは言わない。 だって こちらもルークを渡すのが嫌だから。 「はいはい。もうその辺にしといてくれないか?」 ギャーギャーと騒ぐ兄弟の真ん中で、ガイは大きなあくびを1つして2人に仲裁の声をあげた。 Fin. あとがき→ - 戻る - |