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□温かく見守ります
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HRの終わりを告げるチャイムが鳴る。
委員長が号令をかけると、瞬く間に教室は生徒たちの放課後の喧騒に包まれた。
緊迫した雰囲気が見え隠れし、勉強を一緒にしようと誘い励む生徒もいれば、まったく気にせずに帰りに遊び行こうと真逆の方向へと誘う生徒もいたり。

学生の敵の1つである、タームテストが来週に迫っていた。

来るべき戦いまで残すところあと数日に控えた今週は、どの部活動も活動は停止、ということになっていて。
ルークはその旨をガイに伝えると、ちょうど彼も今週は自分と乗る電車の時刻が一致するらしく、一緒に帰ろう、という話になっていた。

…の、だが。


切羽詰った様子が容易く理解できる剣幕で、机の中を漁り取り出した教科書を机上に置いてある鞄へと無造作に突っ込む生徒―ルークがいた。

学校の掃除当番の週に当たっていたことをすっかり忘れており、帰ろうとしたルークを教室から出る間際に担当の先生に捕まえられ、そうして掃除場所へと連行されたのだ。

その掃除がようやく終わり、いま戻ってきて身支度を急いで始めたという訳だった。

既に教室にはルーク以外に人の気配はなく、ガランとしていた。夕焼けのオレンジ色が柔らかく教室内を照らす。

(急がないと…!)

どんどん日が翳る室内に急かされ、勢いよく復習に必要な教材を取り出し抱えると―

ばさばさばさっ。

その作業の途中に、抱えていた数冊の教材が誤って腕からこぼれ落ち、床に四方八方に散らばった。

約束した時刻までわずかだと言うのに、気持ちばかりが空回りして、ルークの心の中は半泣き状態だった。

しかしまだ間に合う可能性を捨てず、慌てふためきながらも地面に手をつき、敏捷な動作で散らばった教科書を一ヶ所に集め、それらを一気に拾い上げると、

「ルーク」

屈ませていた体をすばやく起こした後ろには、ルークの同級生で同じクラスメイトのティアが立っていた。

「はい、まだこっちにも落ちてたわよ」

「サンキュ」

短くお礼を言って、ティアから差し出された1冊の教科書を受け取ると、ルークはそれをすぐさま鞄の中へと乱暴に突っ込んだ。

「今日は何かあるの?」

慌てぶりが尋常じゃないルークを疑問に思ったティアがそう訊いてみる。

いくらテストが近いからと言っても、目の前の少年が勉強に熱心に勤しむ性格ではないということは、小学校から続く仲のティアはよく理解していた。
勉強する気はないのに、それでも一応教科書を持って帰る、彼のそんな些細なことも。

「う、うん。ちょっと……用事っ」

返ってきた返事は不自然さがまとわりついていて。
その言葉の端には選ぶ単語を迷ったかのような反応に、鋭く研ぎ澄まされた勘を持つティアはある1つの予想が浮かび、口にする。



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