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□放課後楽章
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沈む太陽と入れ替わりに、オレンジ色の空の彼方にうっすらと半透明の月が浮かび始める。
今日も変わらずに流れて行く時間の中、学生たちの仕事という名の学校が終わり、それぞれが帰路に着く放課後。

高校生のルークとてそれは例外ではなく、途中途中クラスメートに男女関係なく誰かに呼ばれては律儀に手を振り挨拶を交わし、歩みを運んでゆく。

「ルーク!」

そんな中、またどこからともなく自分の名前を呼ばれたことに気付き、ルークはきょろきょろと首を巡らせ辺りを見回した。

その意外な人物にルークは思わず目を丸める。


「―ガイっ?」

ルークは校門の前に佇むガイの姿を見つけ、なぜ彼がここにいるのか不思議に思いながらも すぐさま嬉しそうに駆け寄った。

「大学は?」

「今日は珍しく早く終わったんだ。だから一緒に帰ろうと思ってさ」

そっか、と ガイの返事に答えるルークの口元は自然と綻んでいた。

ガイと帰るのは実に久しぶりだ。
まだガイが同じ学校に通ってた頃はよく共に帰ったものだが、高校を卒業し大学に進級してからは双方の下校時刻がなかなか合わずじまいだったのだ。
登校時刻はあまり大差ないので、毎日朝に出会い話すが、普段一日に一度しか聞けない声と見れない顔を二度見れるというのが嬉しくて。

「帰ろう? ルーク」

やんわりと優しく微笑むガイにルークは頷き、そしてまた彼と同じように笑み返すと、二人は家路に向かう道を歩き出した。





特にあてどころがない話を互いに交わしながら、明暗のバリエーションが付き始めた同じような外見の家が並ぶ、その通りの平坦なコンクリートの道を、横に並んで歩く。

と、そこで「そういえば…」とガイが話を切り替える。


「今日、アッシュは?」

過保護な保護者の赤い姿が見えないことに気付き、訊いてみる。

「生徒会の仕事で遅くなる、って」
ルークがそう答えると、ガイは「ああ、なるほどね…」と呟き合点がいったような顔になった。

「だから今日は一人だったんだな。アッシュも居ることを覚悟していたんだが…―相変わらず大変そうだな」

「だよなーまぁ昔から出来る奴だけど」

「違う。ルークが、だよ」

「? おれ?」

てっきり兄のアッシュのことだと推測していたが自分のことだと言われ、何がだろう? と頭を傾ぐ。

「…携帯の事とか、俺たちの事とか…さ」

しかしガイのその言葉でその訳を悟って、申し訳なさ気に踵を返す。

「あー…うん。でも携帯は頑張って親に説得中だし、困るのは俺じゃなくてガイだろ?」

「後者の火の粉は二人に降りかかる…か。でもずっとこのまま、って訳にもいかないし…ほんと、アッシュのあの過保護っぷりにも困ったものだな。―あの執着ぶりは最早“過保護”と言うより…」

「『より』?」

「…いや、何でもないよ」

危うく口から出そうになった言葉を押し込む。
ガイの頭に浮かび上がった、一つの確信に似た疑問。アッシュがルークに対する感情へのある可能性を無理やりに振り払った。

(まさか…な)

―そんな会話を交わしながら、曲がり角にさしかかったルークが、一歩先に足を出した時。

鳴り響くクラクションの音が聞こえてきて―…


「ルーク!!」

「っえ?」



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