旧書庫のため非公開

□祈り AllenSide
1ページ/2ページ



『祈り』









気づかれちゃいけない。
気づいてはいけない。
必死で隠そうとしているのに。



「アレ〜ン!」

「っなんですか、大声で」



人の目も気にせず、笑顔を向けてくるから。
緩みそうになる表情をごまかすことに必死で。
冷たい言葉しか出てこない。返せない。



「そっけないさぁ〜。せっかく一緒にご飯食べようと思ったのに」

「・・・勝手にどうぞ」



嘘。
本当は、期待してた。
入り口から見えるこの席に座ったのも。わざと時間をかけて食べていたのも。
見つけて欲しかったから。
話しかけて欲しかったから。

・・・一緒にいる時間が欲しかったから。



「どうしたさ?なんか俺の顔についてる?」

「え?あ、いえ、違います。ちょっと・・・考え事を、してて」



言えない。
貴方のことを見ていた、なんて。
絶対に言えない。

この人はいずれブックマンになる人だから。
何にも執着しない。
僕の想いは、届かない。

僕は大切な人を手にかけた罪人だから。
大切な人はもう作らない。
こんな想い、許されない。

けれど・・・



「アレン」

「は、い。なんですか?」



その声で呼ばれるたびに、心臓が跳ね上がる。
その瞳で見つめられるだけで、気持ちが溢れそうになる。
必死に笑顔で、隠しても。
きっとあなたには、見抜かれているんじゃないかと。
不安でしょうがない。



「夕飯も一緒に食わん?一人より二人のほうが美味しいさ」

「・・・そう、ですね。ご一緒して構わないなら」



それでも、少しでも貴方のそばにいられるなら。
貴方の笑顔を見ることができるなら。
どんなに辛くても、隠し続けてみせる。
この想いに気づかないフリも、してみせる。


だから



この人の隣にいることを




神様、どうか、許してください。









あとがき→
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ