主にSSや連載の設定、裏話などを書くつもりです
◆No.19 涼乃

第1話


「今日はここまで」


数学家教師の土方は次の授業へと向かう。


次のクラスのことで思わず頬が緩まってしまうのをどうにか抑えて平静を装う。









「土方センセ」


問題集を片手に1人の女子生徒が彼を呼んだ。


彼女こそ、土方の頬が緩む原因の優等生。


「どうした?」


3−6の委員長・水彩 由稀


彼の5歳年下の恋人である。





「分からない問題があるんです。


教えていただけませんか?」


「どれだ?」


少し身体を屈めて彼女が持つ問題集を覗き込むと、


確かに厄介な三角関数の問題。


頭の中に過程を並べて、どうすれば理解しやすくなるかを考えた。


「それな、


合成関数にしてグラフ書いてタンジェントを求めてから原点から最大値を半径とする円を書いてみろ。


その交点が座標だ」


「えっと・・・・・。













これで合ってますか?」


俺の説明に沿って問題を解いていた彼女は、


長い途中式の最後に現れた答えを見せた。







・・・・・合ってる。


「やった!


有難うございます、土方センセ」


「どういたしまして」








自然に2人は離れる。


学校側にばれると非常に厄介なので必要以上に一緒にいることは出来ない。


お互いそれをもどかしくも感じていたが、耐えるしかないと諦めていた。



2009.07.10

2009/07/11(Sat) 03:35  コメント(0)

◆No.18 涼乃

次のSS連載は銀魂で土方教師×3年生ヒロインです。


これは涼乃が2年前、2007年の1月中旬に書いたものです。


サイト開設前の作品です。


それでは恒例のキャラクター設定です。



水彩 由稀(スイサイ ユキ)
164cm 47kg
3年6組の委員長
5歳年上の土方と付き合っている
学年一の秀才だが少し前まで数学だけが赤点常習犯だった
面倒見が良い


土方 十四郎
177cm 64kg 23歳
生徒からは絶対的な人気を浴びる数学科新任教師
普段は伊達眼鏡をかけて目つきの悪さと童顔を隠している
由稀の彼氏


陸奥 光(ムツ ヒカリ)
158cm 44kg
現・執行部会長で由稀の親友
普段は標準語を話し淡々としているが、キレると土佐弁に変わる
3年6組所属で成績は学年2位


坂田 銀八
177cm 65kg 26歳
3年6組の担任
よく古典の授業中に万葉集を読ませながらランニングさせる非常識人
生徒から酷い扱いをされる


高杉 晋助
170cm 60kg 25歳
左眼に眼帯をしている妖しさ全開の英語科教師
面白いことがあるとククッと笑う
陸奥と由稀とは試験作成者として対決している


その他の教師

沖田 総悟 23歳
化学がメインの理科新任教師

桂 小太郎 26歳
変人だが常識は備わっている社会科教師

山崎 退  24歳
優しくカウンセリングが得意な保健医



2009.05.03

2009/05/04(Mon) 01:04  コメント(0)

◆No,17 涼乃

7.5 大好きな君へ(4)




ここ数日立て続けにあった上級生からの呼び出し。


「陸奥。


そろそろ凍来と付き合ったらどうです?


凍来が可哀相で見ているこちらがイラつくんですよ」


嘗て般若と恐れられたNo.01・美哉。


外見とは裏腹に超腹黒い。


「何で凍来が可哀相なんだ・・・・・?」


「・・・・・呆れた。


何も理解していないんですね」


自分の気持ち。


そして、






―――――凍来の気持ち。



「陸奥たんは凍来たんが好きなんですよ」


「君が好きな凍来を焔に捕られてしまってもいいのかい?」


「嫌よね〜?


だって、大好きな凍来だから」


松、鴉羽、風花の攻撃に、俺はようやく凍来を1人の女として好きなのだと気付いた。


それが今日だったのだ。







「じゃあ呼び出されてたのは告白とかじゃなかったんだ・・・・・」



「当たり前だ!


あいつ達がそんなことするように見えるか?」


「・・・・・見えたんだもん」


早とちりをしたことが恥ずかしかったらしく、耳まで真っ赤にした凍来を見て、俺は抱き締めたくて仕方なかった。






「で、返事は?」


これが1番知りたいこと。


俺と焔、どっちが好きなのか。



「私も・・・・・、






陸奥が大好きだよ・・・・・!」



「良い返事だな」


今度は止めることなく抱きしめて、額に軽くキスした。


解放すると凍来との視線が絡まって、引き寄せられるように唇が重なる。


甘い、果実のような柔らかさ。


何度も触れて重ねたそれは、やがて深いものへと進んでいった。



2009.04.29

2009/04/29(Wed) 10:59  コメント(0)

◆No.16 涼乃

7.5 大好きな君へ(3)




焔が差した先を眺めた凍来はハッと驚き、見る見るうちに赤い顔になった。


「じゃ、あとはごゆっくり〜」


「ちょっと、焔?!」


焔はすれ違い様に笑い、小声で言葉を残していった。





『ちゃんと言わないと伝わらないよ』





・・・それはお前もだろうが。


それなのに、あいつはこの場を去った。


機会をくれたのか・・・・・?







「・・・・・凍来」


「ご、ごめんなさい!!」


決して目を合わせようとはせずに、ひたすら下を向いて謝る彼女に俺の怒りのポルテージが上がる。


「顔上げろ」


ふるふると首を振って拒否する凍来。


どうしてもこっちを見ようとしない彼女に、俺は強行突破の手を使った。


「凍来」


「や・・・・・!」


顎を掬って無理やり顔を上に向けると、真っ赤な顔をしながら泣いていた。





・・・・・ヤバい。


「誰がお前を好きじゃないって?」


「・・・・・」


「俺が好きなのは風花?秋津?


ふざけるなよ!」


「ごめんなさいっ」


こんなにも怒りを露わにしたのが初めての所為で、凍来はぽろぽろと仕切りなく涙を零していた。


ただ、今回だけは笑って済ませられない。







「俺が好きなのはお前だ!


勝手に勘違いするな!」


「ごめんなさいっ!!


・・・・・え?今・・・・・何て?」


「・・・・・チッ」


言うつもりは無かったのに。


勢いに任せすぎた。







「だから、俺が好きなのは凍来だって言ったんだ」


「・・・・・ウソ!


だって美哉先輩や松先輩にも呼び出されていたのに!」


「あれはお前が原因だ!!」


「どうして私?!」


仕方なく、今まで黙っていたことを全て話した。



2009.04.29

2009/04/29(Wed) 10:57  コメント(0)

◆No.15 涼乃

7.5 大好きな君へ(2)



「凍来って、まだ陸奥と付き合わないの?」


思わず聞こえてきた会話に足を止めた。


中にいるのは凍来と焔。


2人の会話は続く。


「陸奥と付き合えるわけないでしょ!?


そんなの、ムリだよ」


「・・・どうして?」


「だって・・・・・。







陸奥は好きな人いるもん。


No.03か・・・・・、特殊ナンバーか」


・・・・・。


勝手な勘違いをしてる。


俺が風花や秋津を好きになることなんざ、ありえない。


「風花はないと思うよ・・・・・。


秋津は・・・・・そういうの興味なさそう」


「でも・・・・・。

秋津といる時の陸奥の表情、凄く柔らかいから・・・・・」


凍来、お前はそんな風に俺を見ていたのか?


好きな女に勘違いされているのはさすがに堪えるものがある。


俺はお前といる時が1番自然にいられるのに。





「とにかく!


陸奥が好きなのは私じゃないの!」





―――――っ!!


「あ・・・・・」


「どうしたの?」


さすがに、これ以上聞いていられない。


俺は再び足を進めて生徒会室内に入った。



2009.04.29

2009/04/29(Wed) 10:56  コメント(0)

◆No.14 涼乃

7.5 大好きな君へ(1)




昼休みの生徒会室


「・・・はぁ〜」


「どうかした?」


書類を纏めながら盛大なため息をついた凍来。


どうやら落ち込んでいるらしい。


「・・・呼び出し」


「呼び出しって・・・、何したの・・・・・?」


「私じゃなくて陸奥が。


今日はNo.02」






No.02・松。


実験(というより触診)が大好きな大学2回生。


元・鶺鴒高校の執行部副会長。


「陸奥ってば、最近頻繁に呼び出されてるんだもん」


「何が理由で?」


「分かんない。


教えてくれないから」


陸奥を好きな凍来にとっては、彼が他の女性といるのは心底良い気分ではないらしい。


当たり前だろうけど。







・・・・・あ。


耳を澄ませると、聞こえてくるのは下駄の音。


十中八九、陸奥だろう。


こんな状態の凍来を見るのはあまりにも不憫だと感じたので、賭けてみた。



2009.04.29

2009/04/29(Wed) 10:51  コメント(0)

◆No.13 涼乃

10.さよならのあとに




「焔、先輩?」


訪れた対面式。


君は、もう1度僕の前に現れたんだ。


「久しぶりだね」


僕が卒業してから1度も会っていない。


つまり、5年間振りに会ったってこと。


それなのに、君はあの頃と全く変わってなかった。






「ここに戻ってきたって本当だったんですね」


「誰かに聞いたの?」


「大学で鴉羽先輩に聞きました」


そういやNo.04は大学で体育学部の実践専攻教授になったはず。


どこで会ったのかは聞かないでおこう。





「凍来先輩や陸奥先輩も一緒なんですね」


「幼馴染と言っても、2人とも兄妹みたいなものだから。


君は英語科なんだね」


「唯一の取り柄ですから」


君の取り柄はそんなものじゃない。


人の心を緩和することが出来るんだよ。


今なら言える。












「彩乃。


もう1度、僕と付き合ってくれるかな?」


「え?」


「やっぱり、君が好きみたい。


5年前よりもずっと」


「だって、凍来先輩のこと・・・・・」


「昔はね。


でも、凍来と陸奥が付き合い始めたら、意外と簡単に諦められた。


逆に彩乃の方が忘れられなかった」







不思議だった。


あれだけ凍来を好きだったのに、


陸奥と2人でいるところを見てると、その気持ちは薄れていくこと。


僕は、凍来に幸せになってもらいたかっただけなのかもしれない。





「私で、良いんですか・・・・・?」


「彩乃でじゃない。彩乃がいい」


彼女に腕を伸ばして、そっと抱き寄せた。







「愛してる」


「私も、―――――愛してます」







長い回り道をして、ようやく本当を見つけた。


色々なことがあったけど、僕は後悔していない。


ちゃんと、彩乃を見つけられたから―――――



        ―Fin―


『たった1つの恋心』完結です。


次は番外編として凍来と陸奥の告白シーンを書こうと思っています。


お付き合い有難うございました!!



2009.04.15

2009/04/16(Thu) 01:34  コメント(0)

◆No.12 涼乃

9.おもいでのかおり




「焔〜。この小説面白いね!」


先日、暇だと言った凍来に貸したのはファンタジー小説。


現在、卒業した鶺鴒高校で僕と凍来、陸奥の3人が教師をしている。


凍来は生物を専攻する理科教師。


陸奥は数学科教師。


僕は現代文専攻の国語科教師。


さっき凍来に貸した小説も授業で使っていたもの。





「続き読みたいの?」


「うん!」


1巻を受け取って、彼女に2巻を渡した。


これ貸したの昨日なんだけどな・・・・・。


凍来は昔から読書が好きだから読むスピードが異常に速い。


「じゃ、借りてくね!」


そしてそのまま授業に行ってしまった。







・・・・・マイペーズ万歳だな。







「凍来のやつ、何読んでたんだ?」


「教えてもらえなかったの?」


「絶対に見せないとか言ってやがったからな」


後ろから現れたのは陸奥。


昔から下駄で校舎内を歩いているのは本当に笑える。


まぁ、秋津も同じだったけど。






「これ」


「・・・お前こんなの読むのか?」


「授業で使っていたやつだよ!


人を変な目で見ないでくれる?」


「これを授業で扱ってることにも驚いてるんだが・・・・・」






・・・驚くのも何となく分かるけど。


ファンタジーと言っても、不思議世界みたいな感じだし。


想像力を養うためらしい。






「凍来は気に入ったみたいだよ」


「あいつこういうの好きだからな・・・」


「で、君は授業ないの?」


「いや、ある。


それより、お前に手紙」


「手紙?」


正確には予定の書かれた行程表。


4月から新たに採用する教師の名前と、その対面式の日付。













『卒業してどこかで再会することがあったら笑って下さい』


不意にその言葉を思い出した。


君は、笑ってくれるかな?


あの時みたいに、憧れるぐらい眩しく微笑んでくれた顔が見たい。






「お帰り、彩乃」



2009.04.11

2009/04/12(Sun) 02:55  コメント(0)

◆No.11 涼乃

8.やさしいてのひら




「ごめんね、呼び出して」


「いえ・・・・・」


やっぱり陸奥の言った通り、昨日のことを知ってるみたい。


じゃあ話が早い。








「長い間振り回してごめん。


やっぱり、けじめつけなきゃって思って」


「けじめ・・・?」


「彩乃とはこれ以上付き合えない。


好きだって言ってくれたのは嬉しかった。


でも、今の僕じゃ君を幸せにしてあげられない」


これが、本当の気持ち。


彩乃が嫌いなわけじゃない。


むしろ、好きなぐらい。


ただ、凍来には敵わないんだ。


きっと、完全にこの気持ちを忘れるには数年かかるだろう。


1人で向き合う時間が必要だと思った。


「焔先輩・・・。


本当に凍来先輩のこと好きなんですね」


「うん。


ずっと、大切な人なんだ」


「・・・私も、きっと焔先輩はずっと大切な人だと思います。


だから―――――・・・」



2009.04.09

2009/04/10(Fri) 01:01  コメント(0)

◆No.10 涼乃

7.ことばがたりない




「凍来って、まだ陸奥と付き合わないの?」


「陸奥と付き合えるわけないでしょ!?そんなの、ムリだよ」


「・・・どうして?」


そこまで謙虚に(凍来の場合は本気だと思うが)なる理由が分からない。


「だって・・・・・。


陸奥は好きな人いるもん。


No.03か・・・・・、特殊ナンバーか」


「風花はないと思うよ・・・・・。


秋津は・・・・・そういうの興味なさそう」


「でも・・・・・。


秋津といる時の陸奥の表情、凄く柔らかいから・・・・・」


君の前で笑っている彼の表情はもっと柔らかくて優しいけど・・・・・。


そこには気付いていないんだろう。






陸奥が好きなのは凍来なんだけどね。


「とにかく!陸奥が好きなのは私じゃないの!」


「あ・・・・・」


「どうしたの?」


凍来の後ろを指差すと、彼女は振り返ってすぐに真っ赤な顔をした。


少し怒った表情を浮かべる陸奥がいた。


多分、今の言葉が聞こえていたんだろう。






「じゃ、あとはごゆっくり〜」


殺気だった彼を見たのは本当に久しぶりだ。


恐らく、去年までいたNo.04と対峙した時以来じゃないかな?


「ちょっと、焔?!」


ごめん!


僕がいても多分邪魔なだけだから!


心の中で凍来に謝った。


でも、不思議と気持ちがすっきりしていた。


きっと、凍来が完全に陸奥のものとなるから。


区切りを付ける時が来たんだ。



2009.04.07

2009/04/08(Wed) 03:20  コメント(0)

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