飛角もしくは角飛

愛情は裏返ってばかり
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「どこを見てる飛段!気を抜くと死ぬぞ」


ったく、角都のやつ死ぬだ殺すだ言いやがって。
殺せるもんなら殺してほしーっていつも言うのがわかんねーかなァ?

対峙する敵は3人、見たところせいぜい中忍クラスってとこだろう。
なのに角都はいつもと同じ、あーでもねーこーでもねーってうるさい。


「飛段、避けろ!」


あーあ、これだから年寄りはヤだっての。
いつまでたってもガキ扱いで、いったいお前は何様だっつんだよ。
オレがやられそーになったら助けるのがお前の役目だろーが。
じゃなかったらコンビなんか組んでる意味がねー。

...ってことはつべこべ言われててもおかしくはねーか...

難しいことはよくわかんねーわ、まあどーでもいいことなんだけどな。
つってもオレも暁の一員だし、ここはいっちょやっとくとするか。


「さっさと終わらせよーぜ角都ゥ!!」


呆れたようにオレを見る角都の赤い瞳。
この無表情な目から感情が読み取れるようになったのはいつだったろう。
いきなり動き出したオレを援助するように伸び始めた触手。


「オレたちにたった3人で挑むとは一億年早えーんだよォ!!」


いくら当てても倒れないオレたちに慌てふためいた表情の敵。
どうやらクナイで倒すのは諦めたようで、3人が一斉にオレめがけて走る。


「ぼーっとするな飛段!」


オレが見てたのは焦った顔の角都だった。
焦ってやがんな、と思ったらまた大声を出した。


「危ない、飛段!!」


いきなり視界が跳ねたと思ったらまた首が飛んでやがる。
たまには口ばっかりじゃなくて手もちゃんと出してくれっての。
木の葉にやられた傷だって、お互いやっと治ったばっかだろーが。


「馬鹿が、なめすぎだ」
「...助けてくれりゃいーじゃねーか」
「...」
「さっさと倒して行こーぜェ、オレもう疲れちまったわ」
「もういい、お前はそこで見てろ」


スゲー怒った角都の声、でもあの目から今なにがわかる?

―― あいつはきっとオレじゃなくて、オレをやった敵のことを怒ってる。

あの容赦ない戦いぶり、敵じゃなくてマジよかったぜ、ホント。
ちぎるまで体を締め上げる触手、戦闘意欲すら失った生き残りを切り裂いた圧害。
だけどそれはゾクゾクするほどキレイで、首だけなのに全身が震える。

戻ってきた角都が何事もなかったようにオレの首を拾い上げ、黙ったまま体の方に向かう。
さっきまで敵を追い回してた触手は殺気を失って、静かに首と体を繋いでいく。


「なあ角都ゥ」
「...なんだ」
「おまえってさァ、オレのことスゲー好きだろ?」
「...」
「いつも飛段飛段うるせーしよー」
「...黙れ」
「あんな戦い方すんのって、いつもオレが攻撃されたあとじゃねェ?」


もうすぐ首を一周する触手、それが繋がってるうちに思い切り手を伸ばした。
いつも小言ばっかりの口に唇を押しつけても、やっぱ角都は離れようとしなかった。


「...突き飛ばしたりしねーの」
「...まだ首を縫い終わってない」


それが言い訳だってことくらいオレにだってわかるぜ?
黒い糸をプチンと切って「儀式は」と言う角都がどこかぎこちない。


「...やっぱオレのこと好きだろ?」
「いいかげんにしろ」
「好きでもねーのに黙ってキスされてんのかよ」
「...おまえが勝手にしてきたんだろう」
「そんなこと言ってると今晩あたり襲っちまうぜェ?」


そっぽを向いた角都は怒った声のまま小さく「好きにしろ」と言った。
...なんか認められたみてーでドキドキしてきちまったんだけど...
あーもうこんなんじゃ儀式どころじゃねーっつうの。


「もーいーわ儀式、さっさと行こうぜェ」
「...」
「今日は一部屋でいーだろ、ゲハハハァ」
「...その下品な笑い方をやめろ」
「またまたそんなこと言って、ホントはかわいーとか思ってるクセに」
「馬鹿かお前は」


呆れた顔で歩き出した角都はいつか殺してやる、と低い声で言った。
そんなこと言いながら、いつもオレの方ばっか見て戦ってるくせに。
ニヤニヤしてたら「気持ち悪い」って拳骨が降ってきたけどそれも愛情の裏返しじゃねーの?

その方が楽しーからそーいうことにしとく。
 

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