飛角もしくは角飛

Fahrenheit104
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「...んだよォ、ヤダっつってんだろーが!」
「黙れ」


そんなこと言う前に触手で口塞いでんじゃねーよ。
身体中に巻きついた触手に絡まれて動けなくなる。全部いつもと同じ手順。
これから角都は嫌ってほどオレを抱いて飽きたら放り投げんだ。ちくしょー、馬鹿にしやがって。
いくらてめーのこと好きったって、こっちにもちょっとしたプライドはあんだぜ?


「...こんなにしといて嫌もなにもないだろう」


うるせー、やらしい手つきで触ってっからじゃねーか。
頭ではこんなにイヤなのに反応する身体が情けなくて泣けてくるぜ。
あー、もうそんなことすんのかよ。オレの身体はもうてめーを受け入れられるほど淫乱かよ。
入ってきた角都に悲鳴が洩れちまった。ムカつくから逃げようとしたらつぎはぎの腕に捉えられた。


「声を出せ」
「...ふんっ...ヤなこ...った...」
「...強がったって無駄だ」


腹膜に響くほど奥に侵入した角都。腹が破れそーに痛てーのに気持ちとは逆に身体中がざわつく。


「...ん...っ...角都ゥ...」
「初めから素直にそうしろ」


だって...だってよォ、おめーのコレ...凄すぎんだよ...
凄すぎっケド今日はしたくねんだ。そんな気分じゃねんだ。
オレはてめーの性欲のハケグチじゃねーぞ...なのになんでこんなふうになっちまうんだよ?
人の気持ちにつけこんでオレを蹂躙する男。息も乱さねーでそりゃねーだろ?
せめて一度くらいオレの名前、呼んでみたっていーじゃねーか。


「...いくぞ」
「んっ...さっさと...イケよ...うぜ...ェ...」


ちくしょー、そんなに突き上げられたらもうワケわかんねーだろーが...
...オレのことなんかどーも思ってねーからってめちゃくちゃに動いてんじゃねーよ。
こんだけ人が好きだっつってんのにセックスでごまかしやがって...あ...でももうムリ...


「いく...角都...ゥ!」


角都の手の中に出した瞬間気が遠くなってた。
こんだけ疲れてるってのにどーせ角都は聞く耳なんか持ってねーんだ。
オレが怒って三連鎌を持ち出すか本気で意識を失うまで、あいつはずっとこんなこと続けるんだかんな。

好きじゃねーなら好きじゃねーなりに礼儀くらいわきまえろっての、ホント。



「どこ見てる飛段!」


どこ見てるって敵の動きに決まってんじゃねーかよ。いちいちうるせーんだよ、人の気も知らねーで。
なんとも思ってねーくせにオレのことなんか気にすんなってーの。
それともアレか?ハケグチがいなくなったらまた探すのはメンドーだとかそんな理由かよ?
あーもうメンドクセーなァ!!投げた鎌は角都の肩をすっと切り裂いた。


「あ、ワリーワリー」
「ちゃんと前を見て戦え!さもないとお前も俺も死ぬぞ」
「死ぬワケねーだろーが、冗談は顔だけにしろっつーの」
「...貴様...あとで覚えておけ...」


本気になった角都が敵を一掃するのを黙って見てた。手も出す気にならねー、弱すぎる敵と強すぎる角都。
こんな角都をずっと見てたんだよな、そんである時好きだって言った。
でも好きだって言った瞬間あいつはオレを押し倒して、あっさり人の処女を奪いやがって...
考えてみりゃあん時からもう身体だけだったんだよな...だけどいーかげんもうヤなんだっつーの。
どこ見てっかわかんねー目で犯されんのも一方的に好きなのももー終わりにしてーんだわ。



「...ワリーな」
「いいから静かに寝てろ...そこまで黙ってるなんて、お前は馬鹿か」


帰り道でぶっ倒れたオレをおぶってきた角都が手拭いを濡らして額の上に置いた。
体温計の目盛りは40℃を指してて、さすがのオレもちょっとビビっちまった...まー死ぬことはねーんだケド。
角都は枕元に座って、手拭いがぬるくなるたび洗面所に走る。
悪い気はしねーケド...オレのことなんかなんとも思ってねーくせに甲斐甲斐しく世話なんか焼くなよ。


「...アレか、性欲処理の相手がぶっ倒れてちゃ困るってか」
「何だ、いきなり」
「どーせセックスのことしか考えてねーくせに優しくしてんじゃねーよ」
「...ああ?」
「もうヤなんだよ、オレばっか好きで...てめーはオレの身体だけじゃねーか」
「...飛段...?」
「この任務が終わったらコンビ変えてもらうわ、てめーといたらオレ壊れちまう」


ちょっと絡むだけのつもりだった。なのに熱のせいか滑り出した口が止まらなくなった。
驚いてオレの顔を見てる角都。わかったって言えよ。弄んで悪かったって最後くらい謝れよ。
じゃなきゃこんなふうにしゃくり上げるオレがかわいそすぎだろーが。


「...なんのことだ」
「ちょっと隙がありゃセックスセックスって、オレはてめーの便所じゃねーんだよ」
「...満足してなかったのか?」
「オレのこと好きでもねー男とそんなことしたくねーっつってんだよ!」


角都の腕がオレを抱きしめる。この期に及んでこんなことしやがって、やっぱこいつはひでー野郎だ。
なのに角都はオレの涙を指で拭き取ると神妙な面持ちで口を開いた。


「...誰がお前のことを好きじゃないなんて言った?」
「へ...だって...オレがヤダっつっても聞く耳持たなかったじゃねーかよ」
「何とも思っていなかったら止められるのかもしれないがな...」
「ハァ...!?意味わかんねーんだケド」
「好きだから止まらなかった、そういうことだ」


ちょっと待てよ角都、おめー今なんて言った?もしかしてオレのこと好きだってことか?
つか好きだから止められねーっつっても...限度ってもんがあんじゃねーの...?


「誤解させてたんならすまなかった」
「...や...いーんだけど...もっとちゃんとゆえよ」
「なにを言えと言うんだ」
「...オレのこと好きだって」


角都はそれに答えなかった。答える代わりに弱ってるオレにのしかかって来やがった。
ったく、こいつもバカなんじゃねーの?だけど嬉しかったから思いっきり背中を抱きしめてみた。


「飛段...好きだ」
「...!」


角都を布団に引きずり込んだのは珍しくオレの方から。
夜が明けるまでいつもみてーに抱き合って、目覚めたとき角都は赤い顔で荒い呼吸をしてた。
枕元の体温計を口に突っ込んで待つこと5分、水銀は40℃の目盛りを少し超えてた。


「うわ角都、おめー40℃超えてんぜェ!?」
「...おまえも計ってみろ...」


二人して40℃の熱を出したオレたちは一日中宿屋で過ごす羽目に。
その日もずっと抱き合ったせいで任務に遅れが出ちまったのはクソリーダーには内緒だ。

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