飛角もしくは角飛

限りなく明るい未来
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「暁の目的なんか知ったことかバーカ、オレにはオレの目的があるんだっつーの!!」

クソリーダーに呼び出されて何かと思えばいきなり説教を食らった。
目的を忘れるなと言われて逆上したオレ。諭すような口調で言われんのがやけにムカつく。
この組織に入ってから今までそんな目的聞いたこともねーよ。
なのに世界征服なんてガキの夢みてーな話も、面子を思えば無理だとは言えねー。

「いくら不死身だからっておまえはあまりにも無茶をし過ぎる」
「...それがどーしたってんだ?」
「今目立つのは得策ではない、水面下で動けと命令してあったはずだ」
「命令命令ってうるせーんだよ、結局やることは同じなんじゃねーか」
「作戦は最も効率的に目的を達成するよう組まれている」

オレにはよくわかんねーわ、どうせ邪魔になるヤツは消してくんじゃねーのか?
それに不死身じゃなくたってオレの動きは変わりゃしねーよ、教義を守って殺戮するだけだ。
オレにはオレの目的がある。今となっちゃ不死身でなきゃならねー理由もある。
なのに目の前のボディピアス野郎は小難しいことをベラベラベラベラまくしたてやがる。

「おめーらの目的なんか知るかよ、オレにはジャシン教を広めるって目的があんだ」
「だが暁に所属している以上命令は絶対だ...それに飛段、おまえ...」
「...んだよ?」
「角都の立場を考えたことがあるのか?」
「はァ!?なんであいつが出てくんだよ!?いくら相棒だからって関係ねーだろーが」

角都がいなければ暁になんか入ってねーのは確かだ、人とつるむのはそもそも性に合わねー。
でもため息混じりのリーダーの言葉は信じ難いもんで、オレは思わず何度も聞き返した。

「角都がどうしても、と言うからおまえを入れたんだぞ?」
「あァ...!?そんな話聞いたことねーぞ」
「暁に入りたいという忍はいくらでもいるんだ、あいつの顔を潰すような真似をするな」
「...んだよそれ...」


初めて会った時、オレは教会で儀式の真っ最中だった。
突然闖入してきた黒装束の男は言葉もなく人の首を捻り、人間とは思えねー馬鹿力で潰した。
...あれからオレたちはどーして一緒に行動することになった?
埃をかぶりかけた記憶を脳味噌の奥から引きずり出してみたら、今と何も変わらない角都がいる。

「痛てーじゃねーか、いきなり何すんだテメーは!?」

ジャシン様への祈りを冒涜されて怒鳴り散らしたオレを見て角都は驚いた顔をした。
そんなことお構いなしに文句を言い続けたら、血まみれの首を拾い上げてまじまじと人の顔を見る。

「...なぜ話せる」
「生きてっからに決まってんだろーが、オレは不死身だっつーの!」
「...不死身?」
「おめー不死身って意味知ってっか!?死なねーんだよ、首だけになっても死なねーの!」

人の顔を眺めながら不死身か、と呟いたあいつは動けねー体を指さしてどうする、とか言いやがった。

「くっつかなきゃ動けねーだろーが、バーカ!」
「...繋げればいいんだな?」

今あいつにバカなんて言ったらぶん殴られるか不機嫌に殺すって言われるか二つに一つだろう。
でもあの時はそうじゃなくて、口から出てきた得体の知れねー黒い糸でちくちくとオレの首を縫い始めた。

「ハァ...!?なんだそれ!?」
「...不死身とまではいかないが俺も似たようなものだ」
「...あァ...?」
「おまえ、俺と一緒に来い」

その言葉に従ったのは似たようなもんだとかぬかしやがったあいつにオレの方も興味を持ったからだ。
儀式の時間はきっちりもらうかんな、それがあいつに出した唯一の条件だった。
いつの間にか同じ装束を身につけてなんとなく今までやってきたけど、あいつがオレを暁に入れたなんて
クソリーダーに言われるまで知らなかった。まあ暁にいる理由なんて考えたこともなかったんだケド。



「馬鹿かおまえは!」

今日も角都の怒鳴り声が飛ぶ。
オレをどーしても暁に、なんてこいつが言ったなんてとても信じられたもんじゃねーぜェ...
はいはい。肩を竦めたら例によってお決まりの台詞、おまえはいつか俺が殺す、だってよ。

「殺せるもんなら殺してほしーっつーの」
「いつか必ず殺してやるから首を洗って待ってろ」
「あー楽しみに待ってるわ、首は毎日洗ってっから安心しとけ」

...ピクッ。
角都がその気配に臨戦態勢を取った。
いちいちそんなこと言わなくてもオレにだってわかるってのに、叫ぶよーに言いながら一歩横へよける。

「来るぞ!」
「わかってるっつーの!」

...

「飛段、罠だ!!」
「あ!?遅せーよ角都ゥ...!!」

耳をつんざく爆発音とともに一気に暗くなっちまった視界。
わかってるとか言った割には笑えねー結果になった...たぶん角都は呆れながら大笑いしてると思うんだケドよ。
あの鹿ヤローに埋められて以来、どーもオレの弱点は知られるよーになっちまったくせー。

気づいてみればまた土の中でしかもバラバラと来たら、黙ってアリの数でも数えてるしかねーってんだよ。
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