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□一粒で二度美味しい君。
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此処は王の執務室。
先程から彩雲国国王・紫劉輝は山積みになっている書類と格闘していた。
「まだあるのだ〜!絳攸も楸瑛も手伝って欲しいのだ!」
「何言ってるんですかっ!書類は全て王が目通しして印を押すんでしょうがっっ!」
「絳攸の言う通りですよ主上。…終わったらお茶でも飲みましょう。藍州から珍しいお茶が送られてきたので、淹れて差し上げます。なので、ちゃっちゃっと終わらせて下さいね」ニッコリ微笑む楸瑛。
「わ、わかったのだ。…楸瑛が淹れてくれるなんて滅多にないからな。早く終わらせて、皆で飲むのだ!なぁ、絳攸?」
劉輝は絳攸を見ると、バツの悪そうな顔をした絳攸がいた。
「絳攸どうしたのだ?」絳攸は申し訳なさそうに話した。
「…主上。折角ですが、仕事が終わり次第帰らせて頂きたいのですが…」
「それはいいが…。そなたにしては珍しいな。早く帰りたいなんて…。」
「何かあるのかい?…というか紅尚書はその事を承諾されているのかい?」いくら主上が良いと言っても、上司兼養い親の承諾がなければ家に帰れないのである。

「あー…、というか、その上司が早く帰る様に言ってきたんだ。…因に今日の吏部は、上司自ら全仕事を引き受け片付いた。」その言葉に劉輝と楸瑛は大きな反応をみせた。「「なんだって?!」」
楸瑛と劉輝は信じられない!と言いたげな顔をしていた。
「明日は…来ないかも…」不吉な事を言う楸瑛。だが、その場に居る者全員否定はしなかった。
「…それは…。な、何か紅家の用事かい?」言葉を詰まらせて絳攸に聞く楸瑛。
そもそも紅黎深という人物は、紅家当主・吏部尚書という高い地位にいるにもかかわらず、全て部下もしくは弟に押しつけていく。国の為、家の為に自ら進んで仕事をするなんてほんの一かけらすら頭にないのだ。
楸瑛も劉輝もいやというほどその事を知っている。
((一体何があるんだ…))
「…まぁ、その様なものだ…。」目を逸らしながら言う絳攸。
「ありえないのだっ!!!あの紅尚書が家の事で仕事をするなんておかしいのだっ!」顔を赤くしてまで否定する劉輝に同意している楸瑛。
(何もそこまで否定しなくても…。だが黎深様じゃあ…当然か…。)
「あ〜…、黎深様を…」理由を言い出した絳攸の声に二人は集中した。
「「黎深様を?」」
「“師”と仰ぐ、黎深様の大切な子が家に来るんだ。」絳攸は言い終わり二人を見た。そして言うんじゃなかったとほんの少し?後悔した。王の執務室にこの彩雲国を代表する美形男達の石像が二つ並んで出来ていた。
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