NovelT
□七月
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七月、
本格的な夏の暑さを迎え入れようとしていた。
先日行われた期末テスト−−
掲示板に張り出された成績上位者の中に、勿論彼女の名前があった−−
首席で、しかも満点で。
それは褒めたたえられる事なのだが…周りと秀麗殿の間の溝がまた深まった。
「………。」
意気消沈の様な彼女に、紅茶を煎れてみるものの、受け取りはしたがそのコップをずっと見つめているだけだった。
(こんな顔をして貰いたくないのにな…)
「秀麗殿…元気だして、ね?…凄いじゃないか満点だなんて!もっと喜んで」
秀麗は顔を上げ暗い表情のまま呟いた。
「だって…また…」
秀麗にはまだクラスに『友達』がいなく、また出来にくい要素が増えたとショックを受けていた。
それでも秀麗は何事にも一生懸命な性格なので手を抜くということはしなかった。
楸瑛は秀麗と成り行きで『友達』になったとはいえ…正直、面白くなかった。
−−君の『友達』はこの私だろう?
「私だけじゃ、不服かな?」
意地の悪い言い方だと思う。けれど、あまりにも自分を見てくれない秀麗にほんの少し仕返しをしたって許してくれるだろう?
「いえっ、そんな事はっ!!そのっ…テストが終わったら打ち上げ?みたいな事とか、友達の名前を呼びあったっりとかしているの見たりして…羨ましくなって…でも、藍先生は大人の方ですしそんな我が儘言って困らせたくなかったので…」
ポツポツと話す秀麗の本音に楸瑛は愛おしさが込み上げてきた。
−−なんて可愛いんだろうか…
「…そんな事、我が儘じゃないよ?…なら、そうだな…」
うーん、と考え込む楸瑛に秀麗はキョトンとしながら見つめていた。
「満点のお祝いに遊びにいこうか−−秀麗?」
優しくフワリ、と微笑んだ楸瑛。
「ッ///はいっ!!…ぇと…楸瑛様っ!!」
(君に名前を呼ばれた事がこんなにも嬉しくて、幸せで…どう仕様もないよ…。
好きな子に名前をよんでもらう事がこんなにも幸せだなんて…初めて知ったんだ−−)
七月、夏の暑さと君への熱が重なった−−