■記憶■

□TOO MACH PAIN
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「真神くん?真神くんを探してるのね?」

……

……

…的中したか。

思わず、ずっこけそうになったのを何とか踏みとどまり、

思いっきり否定したい叫びをどうにか口の中にしまい込む。

絶対表情に出てるはずなんだけど、京香さんは気付いた様子もない。

それどころか、俺が探偵を探してると言い当てれた事が余

程嬉しいのか、満面の笑顔だ。

…探してた…と言えば間違いではないが…違う意味で探してただけなんだが…。

「本当、真神くんと森川くんは仲いいのね。…真神くんに後で連絡するように伝えておくわね。」

「…!?いいです!いいです!大した用事じゃありませんから!!」

思わず凄い遠慮をしてしまった。

もっとちゃんと否定すればよかったかと思ったが、

流石に京香さん相手では何時もみたいに怒鳴り散らす事なんてできなかったんだが、

放っておくとややこしい事になりそうだからな。

「そう?…ならいいんだけど」

俺のひきつった表情に納得できないのか暫く不思議そうに俺を見つめるが,

やがて小さく何度も頷きながら定食屋のショーウインドウを覗き込んだ。

途中、

「そうよね、それが男の子の友情だもんね。」

なんて聞こえたが、どんな勘違いをしてるかが怖くて突っ込めなかった。

このままここに居るとさらなる誤解を招きそうなのでそろそろ行くか。

俯き、聞こえないように小さく溜息を吐いて京香さんをチラリと見てみる。

定食屋のショーウインドウを前に眉を寄せて悩んでいる。

その横顔を見てふと口許が緩んでしまった。

「森川くんは何にするか決まった?」

「へ?」

唐突な質問に面食らい、緩んだままの顔で間抜けな返答を返してしまう。

「あら?森川くんこれからお昼よね?よかったら一緒に食べようかと思ったんだけど…」

一瞬思考が止まった。

懸命に脳内で、今の京香さんの発言を咀嚼してみる。

(…一緒に…食べる…!?!?)

数十秒後、自分でも自覚できるぐらい顔が熱くなった。

それを悟られないように下を向く。

「森川くん??」

「は、はい!是非ご一緒さ、させてください!」

慌てて顔を上げ、少し裏返った声で返事を返す。

自然と緩んでしまいそうになる顔を、なんとか引き締めながら。

京香さんに声をかけられ即答したはいいものの、

あからさまに様子がおかしかったせいで京香さんは困惑した顔をしていた。

「い、行きましょう。早く行かないとランチ終わってしまうかもしれないですしね」

これ以上痴態を晒す前になんとかしなければと思い、

京香さんを急かすように俺達は定食屋ののれんをくぐった。
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