卍謹厳実直卍
□コイビトツナギ
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「コイビトツナギ」
「コイビトツナギしようか?」
突然言われて、首を傾げた。
こいつの言った言葉が何故か異国の、全く知らない国の言葉に聞こえたから。
俺の顔を覗いてた筋肉が声を出して笑う。
おそらく相当間の抜けた顔をしていたのだろう。
わかっちゃいるが、やはり顔を見て笑われるのは腹立つ。
「何がおかしい」
「いや、ごめんごめん。壮一郎くんの顔があまりにもおかしくて」
この野郎。
言うに事書いて顔がおかしいとは何事だ。
あからさまに怒りを表情に出して、俺はそっぽを向いた。
それでも筋肉はきっとニヤニヤしてやがる。
野郎のほうを向かなくても、雰囲気でわかるんだ。
「ごめん壮一郎くん。変な意味で笑ってるんじゃなくて…かわ…」
「だまれーっ!!みなまでいうなっ!!」
慌てて筋肉の口を塞ぐ。
続く言葉は容易に想像できた。
しかしこんな真っ昼間からこんなおっさんに言われて嬉しい言葉ではない。
しかし筋肉は俺の阻止も何のその
「むほっほほっへ」
と塞がれたままなお口にする。
さすがにコレは何を言ってるのかはわからなかったけれど、俺の顔は紅潮していった。
どうせ、なんかサムい事言ってやがるって事が想像ついたから。
睨むように目線だけで筋肉を見遣ると、優しい目で俺を見下ろしていたから慌てて目を逸らす。
俺達の間に、何ともいえない空気が流れた。
甘ったるくて全身が痒くなりそうなこの空気。