卍謹厳実直卍
□きみには一生伝えるつもりはないけれど
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きみには一生伝えるつもりはないけれど
公園で和さんを待っていた。
休日の公園は、子供たちの楽園だ。
幸せそうな笑顔と嬉しそうなはしゃぎ声。
ここにある遊具でどうやって遊ぶかが今の全てで、
その他の事なんて何も見えてない純粋な眼差し。
その様子を眺めていると、自分にもそんな時代があったんだな。
なんて、少し感傷的になりながらも、口もとは自然に綻んでしまう。
俺にも確かにあった少年時代。
だけど、その少年だった俺が今の俺を見たら何て言うんだろうか?
あの頃は、目に映るもの全てが輝いていて、何もかもが手に入ると思っていた。
でも、今は違う。
我慢を覚え、妥協を覚え、顔色を伺う事を覚え。
嘘を覚え、装う事を覚え、愛想笑いを覚え。
気が付けば、他人と深く関わらないで生きていく術ばかり上達していった。
大半の人間はそれが成長する事だ、それが大人になる事だと言うのだろう。