■物語■
□今、此処に在る真実
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それは
忘れられない記憶
1
氷室は、いつもの起床時間より2時間も早くに目覚めた。
時間に几帳面な彼は、自分なりの体内時計を持っている。
「この時間に起きて、この時間に〜をやる」
と、一度決めると、時計を見なくても体の感覚で、
だいたい実行する事ができるのだ。
もちろん、彼も人間だから、多少なりとも時間のズレは有る。
しかし、予定時刻より2時間も早く目覚めてしまう等、
今までの彼からは考えられない事だった。
体を起こし、軽い頭痛に見舞われる。
氷室は、寝起きで覚醒しきってない脳をフルに回転させ、
頭痛の原因を記憶から辿る。
(……俺とした事が…よりによって酒の力を借りるとはな…)
ようやく普通に回転してきた脳裏に、昨夜の出来事を思い浮かべた。