■記憶■

□TOO MACH PAIN
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「森川くん?」

とおば東通りの氷室さんお薦めの定食屋の前に突っ立っていた。

入ろうとは思ったんだが、特に食べたい物もなく。

でも折角氷室さんが薦めてくれたし一度は食ってみなきゃ悪いかな。

でも、もし此処であいつに会ったら飯が不味くなるしな…

なんてぼんやり考えてた時、背後から声をかけられた。

聞き覚えのある声に、無意識に背筋が伸びる。

一瞬、振り返ろうかどうか迷ってしまった。

正直、先刻から貴重な休憩時間を無駄に経過させているの

は彼女の事務所が近所にあるからというのもある。

…いやその理由が大半を閉めるかもしれない。

しかし、この声は間違いなく彼女、

鳴海 京香さんの物であり、その隣にあの目障りな探偵

真神とかいう奴がいるかいないかが俺の貴重な休憩時間を

有意義に過ごせるかどうか運命の別れ道になるんだ。

迷いはあった。しかし、待たせるわけにはいかない。

素早く考えをまとめを、意を決して振り返ってみる。

「よかった。森川君で合ってたみたいね。」

ちょうど真後ろに京香さんが立っていて、思わず後ずさってしまう。

どうやら俺が反応するまで間があったせいか、人違いした

んではと思ってたみたいだ。

少し安心したように息を吐き、微笑みを浮かべる。

「すみません。ちょっと考え事してまして…こんにちは…」

非礼を詫びながら、京香さんの周囲を警戒するように見渡す。

俺の視線を追うように京香さんも周囲をキョロキョロ見回す。

俺の探偵存在確認が終わり、京香さんに視線を戻すと、

京香さんは不思議そうに俺を見つめ小首を傾げていた。

…なんか嫌な予感がする…。

その予感が胸中を駆け抜けた時、京香さんが嬉しそうに手を叩いた。
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