■記憶■

□ a cross
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とてもぼんやりとしていて、かろうじて輪郭を保ってる程度で、それは確実に薄れてきているから。



そして俺は、いつまでもこの神経が割れるような思念の海に流され続けていくんだろう。



何も思わない。思えないのに。



この笑顔が消えてしまうのが無性に哀しい。



そんな気持ち忘れているはずなのに。



でも俺にはどうする術もない。



ただ黙ってそれが消えていくのを眺めるだけしかできない。



これが罰なのか。



犯した罪の代償なのか。



この何もない真っ白な世界で、延々と昏い海の中で溺れ続けるのが贖罪になるというのなら。



それで罪が浄化されるというのなら。



此処でただ無機質に流れ続ける事なんて厭わない。



俺の罪が綺麗に浄化された時。



また、あの笑顔に会えるのか



ありがとう



最後の最後、この瞬間まで



貴女は俺を支えてくれた



でももうこれ以上縋るわけにはいかない



願うことが、今の俺に許されるのなら



どうか貴女の周りがいつだって優しくありますように



貴女が笑うと、世界は少しだけ優しくなるんだ



そこに俺は居なくてもいいから



貴女が笑ってくれていればそれだけで



ふと、何か大切な名前が内から生まれた



でもそれはとても曖昧で



認識する前に、昏い波に流されていった



もう二度と、想い出す事もないだろう



その笑顔に無いはずの腕をのばした



世界が暗い原色に染まる



でも忘れない



またあの笑顔にあうためならば



胸を張って巡りあうためならば



こんな世界、容易く越えてみせてやる



思考が遮断されていく



砂のように小さな光が一つだけ



中におちて消えていくのを最後に





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