■物語■
□秘密の花園☆
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「今日も予定通り一日が終了したな。」
ポツリと呟き、はばたき学園数学教師、氷室 零一は職員室を後にした。
ちらりと腕時計に目をやると、時間は18時10分前を示している。
氷室は顔をしかめた。
予定通り帰宅のはずが、職員室の時計は10分も早く時を刻んでいたのだ。
(いま帰ってしまっては、18時30から始まる、
「1.2の算数教えてティーチャー(低学年向け教育番組)を見るまでに10分も時間が余ってしまうではないか...!!)
時間を持て余すと言う事を知らない氷室は、仕方なく時間埋めの為に職員室の時計の時刻合わせをする事にした。
真中にある教頭の机に靴を脱いで登り、時計を外す。
しばらく掃除されていない時計は、取り外した途端、
モアリ
と埃が舞った。
「ク!...ゴホッ...!!」
氷室は、不覚にも思い切りそれを吸い込んでしまった。
「クッ…ゴホッゴホッ…!」
半分涙目になりながら、机から下り、咳を続ける。
「誰かいるのかね?」
ふと聞き覚えのあるダンディな声が職員室に響いて、氷室は顔をしかめながら上げた。
「り…理事…ゴホッ」
氷室は顔を向けるが、咳が止まない為、上手く言葉を発する事が出来ない。
苦し気に咳をする氷室に、天之橋理事長は足早に近づいた。
「氷室君じゃないか!どうしたんだね?随分と苦しそうだが…」
天之橋理事長は氷室の背を優しくさすりながら、心配そうに尋ねる。
「…ホ…埃を……ゴホッ…ゲホッ」
自分の身に降りかかった事実を天之橋に説明しようとするが、相変わらず咳が止まらず喋る事がかなわない。
「どうやら随分苦しそうだね。そうゆう時は楽になるのが一番だよ。」
天之橋は、二コリとダンディな微笑を浮かべると、氷室のスーツに手をかけ、脱ぐ事をすすめた。