一葉

□もっともっと
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今のティエリアは自分が辿ってきた道筋を辿ってる。
見てて恥ずかしくて、ひどくくすぐったい。

「さて、暫くしたらフォローに行くか」

ロックオンはティエリアのやりかけの入力データを保存した。







物凄い勢いで自室に帰ってきてしまった…。
どうしようどうしよう、変に思われたに違いない。

嫌われた…?あんな態度じゃ、嫌われたかもしれない。

鼻の奥がツンとする。

嬉しかった、彼に抱き締められるのは好きだ。
なのにどうして僕はこんな態度しかとれないんだろう?

「僕は、何がしたいんだ…」

自分自身がどうにもならない。

自分が二人居るようだ。

彼に素直になりたい自分となれない自分。

やりきれなくて涙が出る、好きだ好きだ好きだ。
貴方が好きだ。

なんで彼は…こんな、僕ですら嫌いな僕を好きなんだろう。
好かれる所なんかひとつもないのに。

ベッドに突っ伏してみる。

何もする気にならない。

嫌われたかもしれないと思うだけで涙がでる。

どれだけの時間そうしていたんだろう。

突然部屋のインターホンがなる。

泣きすぎて重い瞼、のろのろと訪問者を確かめる…。
そして急いで扉を開けた。
傍目にはそうは見えないように装って。

「何ですか?」









意外とすんなり扉が開いて驚いた。

絶対入れてくれないと思ってたからだ。

「何ですか?」

いつもの口調。

なのに…泣き張らした目で出てきたのには驚いた。

「差し入れ持ってきた、一緒に食おうぜ?俺が作ったんだ」

あえて触れずにいつも通りに接する。

「貴方が?」

驚いた顔。

意外とすんなり入れてもらった部屋は…なんだか生活感がなかった。

持ってきた差し入れをテーブルに置く。
ポットに入れてきた甘いロイヤルミルクティーを差し出す。

「ほら」

無言でテーブルの上を見つめながらミルクティーに口をつけるティエリア。

「簡単なので悪いな、でもちゃんと食わないと体に悪いぜ」

そう言いながらティエリアの前にサンドイッチを置く。

「これ、本当にロックオンが?」

「本当だよ」

「…買ってきたものみたいだ…こんなの作れるのか」

「昔こういうバイトしたことあるんだよ」

「バイト?サンドイッチを作るのか?」

「他にも色々な、両親が小さい頃テロで死んだから…まぁ、普通に大変だったんだよ」







あんな、態度の僕に差し入れを持ってくるなんて…。しかも自分で作って?

顔には出さなかったけど、実は相当嬉しかった。

嫌われてはなかったらしい、良かった。

しかも、まるで工場で作られたもののように綺麗なサンドイッチだった。

それを問うと、ロックオンは昔バイトというものをしていて、その時に習得したものだと言った。

自分の知らないロックオンを知るのは、何だか嬉しい。

二人でサンドイッチを食べながらとりとめもなく話す。

「私にとって、食べ物というものは自分で作れるものだという感覚がない」

「全く作った事ないのか?」

「ない、食べ物というのは工場で作るものではないのか?」

確かにトレミーではレトルトばかりだ。食材から作ることはない。
しかし、ティエリアは面白いな。
変な所がズレてて可愛い。

「それもあるけど、大概自分で作れるぜ?何か好きなものあるなら、今度一緒に作らないか?見てるだけでもいいし」

「本当か?」

「ああ」






…よし、緊張してないみたいだな。

ロックオンはティエリアの纏う空気を気にしていた。

甘いロイヤルミルクティーが良かったのかどうか、少しリラックスしているようだ。

残りのミルクティーをゆっくり飲みながら、ゆったりした時間を過ごす。

ベッドに座るティエリアの隣にロックオンが座る。

「目、どうしたんだ?」

いいながらティエリアの頬に優しく触れる。
その指先から電流のようなものが流れるような気がする、心臓がバクバクする。
ティエリアはまたワケのわからない感情に支配されつつあった。

「あ…貴方には関係ない、些末な事だ」

「泣いてた?」

かぁっとティエリアが赤くなる。

「何で?」

ティエリアの髪に降れ、一束手に取るとそれをくるくると捻って弄ぶ。

「言う必要はない」

「素直になれなくて自己嫌悪?」

本当の事を言われて、ティエリアは動揺する。

空になったカップをティエリアの手から優しく奪い、サイドに置く。

「いいよ、そんなんで嫌いになったりしないから」

優しく話すロックオン。
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