一葉

□してあげたい
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「ロックオンは何が好きなんだ」

「ティエリア、顔近い…」

ほんっとに無防備に近づきやがって、襲うぞコラ。


いつものように寛ぐ時間、俺のベッドの上で二人、話をしていた。

「ロックオンの好きなものを教えてくれ」

「なんでまた急に、どうした?」

「いいから」

いつになく真剣なティエリア、本当にどうしたんだ?

「ティエリア」

「なんだ?」

「だから、ティエリア」

「は?」

「好きなもの」

無言で冷たい視線を投げつけられる。

「茶化さないで欲しい」

「すみません…、っと、そうだな…コーヒー…とか?」

「疑問形で僕に聞くな。
そうか、コーヒーだな?」

「はい…って、どうしたんだよ、ティエリア」

「なんでもない」

そう言って一人考え事をするティエリア。

「さっきの、冗談でもないんだけどな」

言いながらティエリアのサラサラの髪に触れる。

そのまま頭を撫でてやると、ティエリアは頭をコツンと俺の肩に乗せる。

「それでは困る」

「何が?」

「こちらの話だ」

良く分からないが、猫のように寄り添うティエリアは可愛かった。

最近はこうやって触れる事が出来る。

ティエリアが嬉しそうにしてるのを見ると、こちらも顔が綻ぶ。

それにばかり気をとられていた俺が悪い。
この時、真剣にティエリアに聞いていればこんな事には…。












補給物資の中に、俺宛の荷物があったのを刹那が届けてくれた。

「すまないな、刹那。ありがとう」

「いや、構わない。…箱が大きいわりに軽かったから大した事でもない」

「なんだろうな、心当たりがないんだが…」
ロックオンは首を傾げている。

「開けてみたらどうだ?」

言われてロックオンは箱を開ける。

ぎっしりと大小様々なパッケージの詰め合わせ。

見た目で分からない刹那が

「なんだ、ロックオン」

と問う。

「コーヒー豆だよ、それも色んなメーカーや国の」

それこそ、世界中のコーヒー豆販売会社のものがあるんじゃないだろうか。

「これは…俺も知ってる…」

刹那が指差したのは、世界中に多数の店舗があるコーヒーショップで販売している豆。

「どうやらこれはアジアで採れた豆ばかりをチョイスしたみたいだな」

パッケージの原産国を見ながらロックオンが言う。

「しかし…俺こんなに頼んでないけどな…」

ロックオンはいつも銘柄が決まっており、それを指名買いするのが常で…たまに地上に降りた時に気に入った豆を買ってきている。
今回もいつもの豆をいつもの数量頼んだはずだった。

「補給から帰ってくるティエリアに聞いた方がいい、何かあったのかもしれない」

「そうだな」

地上にはティエリアとアレルヤが補給に行っている。

補給のミスかもしれない、あまり深くは考えなかった。










なんでしょうね、なんの悪戯ですかね。

ロックオンは溜め息をついた。

自室の一角、箱が山積みになっている。
さながら倉庫のようだ。

あれから補給物資が上がってくる度に、ロックオン宛の箱が─多い時には3箱とか─送られてくる。

余りに常軌を逸してるので補給に確認をとったら…どうやらヴェーダからの指示らしい。
最終の補給物資の到着、やっぱり俺宛の箱があった。

うちの優秀な戦術予報士が笑いを堪えながら持ってきてくれた。

「大変ね」

「本当に思ってるかい?ミス・スメラギ」

「思ってるわよ、愛されてるわね、ロックオン」

くすくす笑って箱を手渡すスメラギ。

「嬉しいですけどね、人間らしくなってきて」

「そうね、あの子はもっと色々経験すべきね。でもアレルヤと刹那も忘れないで」

ウィンクしてスメラギは戻って行った。

ヤレヤレ、保護者も楽じゃない。









「ロックオン!」

久しぶりの可愛い声を聞いて振り返る。

ティエリアが嬉しそうに笑って移動バーに掴まり近づく。

移動バーから手を離し、微重力の通路をフワフワ漂ってくるのを受け止めてやる。

「おかえり、ティエリア」

そう言って抱き止めてやれば、はにかんだような笑顔で俯く。

可愛い。

食べちゃいたいな。
破壊力抜群だよ、お姫様。

予告なしにするボディタッチにも嫌がらなくなって、やっとこうやって自分からも触れてくれるようになった。

ここまで慣れてくれるのにどれだけの時間がかかったか。

「荷物はちゃんと届いたか?」

「ああ、ありがとうな、ティエリア」

「そうか、良かった」

話をしながら俺の部屋にエスコートする。
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