一葉

□もっともっと
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もっともっと、貴方に好かれたい。

もっともっと、貴方を好きになる僕。





「僕は…病気なんだろうか…」

一人呟く。

起きてるときは頭から離れなくて、寝ている時まで彼は僕の夢に出てくる。

何も手につかない。

元々あまりない食欲も減退ぎみだ。

取り敢えず、目の前のデータの解析を済ませようと手を動かす…が、進まない。

ただ、データを入力するだけだというのに。

「はぁ…」

溜め息をついて椅子の背もたれにもたれる。だらんと両手を椅子の脇に下ろす。

後ろから扉が開く音がして、よく知った気配が入ってくる。

「ティエリア、お前飯食ったか?」

「まだですが、何か?」

振り向きもせず答える。

「お、じゃあ、一緒に食べようぜ!」

彼が近づいてくる…!駄目だっ、心臓が…!。

今僕はどんな顔をしたらいい?ああ、ヴェーダ…こんな気持ち、僕は今まで知らない。

椅子の背に手をかけられ、心臓が跳ねる。

「何だ?データ解析か?急がなさそうだな、飯行こうぜ」

彼の香りが…ふわりと僕の鼻を刺激する。
それだけでドキドキして、顔が熱くなる。

「どうした?ティエリア?」

顔をのぞきこまれる。

嫌だ、恥ずかしい。

「食べたくないんです、ほっといて下さい」

心と裏腹にそんな言葉が出る。

側にいたい、何もしなくても同じ場所にいたい。
そんな風に願うのに現実になると怖い。

「でもティエリア朝も食べてないだろ?それじゃ頭働かないぜ?」

僕のキツイ物言いにも動じない彼。

「体調管理は万全です、貴方に心配してもらう必要はない」

「最近お前痩せたろ?」

なんで分かるんだ…、確かに食欲がなくて多少体重は落ちたが。

「一時的な問題です」

「由々しき問題なんだよ」

ああ、僕に構わないで!どう接していいか分からないんだ。

なのにロックオンはそんな僕に気づきもしないで、その綺麗な顔を近づけて…

「俺の大事な人がそんなんなったら不安なんだよ」

どうしてそんな事サラッと言う?
頭がぐるぐるする。

「具合悪いのか?」

「……っ悪いっ!悪いから一人にしてくれ!」

きっと僕は病気なんだ。
ヴェーダで検索してもそんな病気ヒットしなかったけど。





どうしたもんかねぇ、うちのお姫様は。

お互いが好きだとわかってからこっち、意識されまくりで避けられまくる。

今だって緊張がビリビリ伝わる。

こんなになるんなら…。

告白する前のがコイツはリラックスしてたのに…。

あんまりしつこくするのも可哀想かな。

「そっか」

そう言って部屋を出ようと、クルリと体を反転させた時。

ティエリアの纏う空気が…とても頼りなげに変わった…ような気がして振り返ると…。

背中が寂しいと言っているようだった。

目眩がしそうなぐらい愛しい気持ちがわきあがる。

駄目だ、抱き締めたい。

思ったら、体は勝手に動いてた。









「そっか」

彼は一言そういって…背を向けて部屋を出ていく筈だった。

そう、そしたら…僕はいつもの僕に戻れる。
だけど、いかないでほしいとも思う。

部屋の扉の音を待っていた僕は…いきなり抱き締められた。

「ちょっ…何だ!何をする!ロックオン・ストラトス!」

「ティエリア…お前可愛い過ぎるよっ」

「訳がわからない!離せっ」

「嫌だ」

何なんだ、この人間はっ!いつもいつも突拍子もない事ばかり!

あまりに恥ずかしくて…逃げ出したい。
彼と居ると心臓が…破裂してしまいそうだ。
何でこんなに体温が上昇して、血圧が上がるんだ。

前はとても落ち着けたのに。

足掻いても足掻いても、ほどけないロックオンの腕の中…気が遠くなりそうだ。

息が苦しい。

抵抗できなくなってきた僕をどう思ったのか、彼はあろうことか…僕の頬にその唇で触れた。

「―――っ!」

言葉にならない、悲鳴にもならない。

僕はあらん限りの力で、彼を振りほどいて部屋から逃げ出した。







「あちゃー、調子に乗りすぎたかな…」

ティエリアが出ていってしまい、一人部屋で苦笑するロックオン。

あんまり反応が可愛いんで、ついついホッペにキスをしてしまった。
それでも唇にしないだけ、俺は我慢したんだが…。

「可愛いよな、初めての恋はあんな感じだったな」

嬉しいのに恥ずかしくて、冷たい態度をとったり。
気になるのを上手く表現できなくて、嫌われることばかり言ったり。

あとですごーく落ち込んだり。

笑ってくれるだけで嬉しくて。
一緒に過ごせる時間が宝物みたいで。

寝ても覚めても、相手の事ばかり。
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