一葉

□飲み込む言葉
1ページ/2ページ


そう、たった一言なんだ。

それを言いさえすれば。




側にいる資格が得られるのに。









「どうした?」

問われてはっ、と気づく。

考え事をしていて食事の手が止まっていた。
「やっぱりレトルトじゃ駄目か?」

少し寂しそうな顔をする貴方。

「そうじゃない、考え事をしていて…すまない」

せっかくロックオンが食事に誘ってくれてるというのに僕は何をしてるんだ。

「無理しなくていいんだぞ?」

心配そうなロックオン。

「いや、アナタと食べてるんだ、美味しくない筈はない」

そう、こんなインスタントでもアナタと食べる事で栄養価が上がる気がする。

「そうか?でもそう言ってもらえると嬉しいよな」

そう言って柔らかく笑う。

僕もアナタのように柔らかく笑えるようになりたい。

二人で食事をしてるとアレルヤと刹那が入ってきた。

「今日は何ランチかなー、ね?刹那」

「Aランチだ、書いてあった…」

「よう、先に食べてるぜ〜」

話ながら入ってきた二人にロックオンは声をかける。

二人はランチを手にロックオンの横に座る。
どうしてロックオンの両隣なんだ?
何かムカムカする。

アレルヤが刹那を見て『あっ』という顔をする。

刹那が自分の前、僕のとなりに座ると思っていたんだろう。

それがロックオンの反対側に座ったものだから、しまったという顔をしたらしい。

僕と目が合い、困った様に笑っている。

だいたいいつもヘラヘラと、何かにつけて誤魔化して笑っているアレルヤはあまり好きではない。

君は曖昧な部分が多すぎるんだ。

何か…腹がたつ。

色々、腹がたつ。

なのに、ロックオンは楽しそうに二人と会話している。

ガタン!

大きな音を立ててトレイを持ち上げ、席を離れる。

「おい、ティエリア?まだ残ってるぜ?」

「もういい、食べたくないっ」

声をかけるロックオンにそう言い捨て、そのまま三人を視界に入れないように、逃げ出すように食堂をでた。

嫌だ、見てたくない。







「あー、何か…機嫌損ねたようだね…」

アレルヤが困ったように眉を下げている。

「なんだ?ティエリア・アーデは何を怒っているんだ?」

分かっていない刹那は、きょとんとしてフォークに刺さったポテトをパクっと食べている。

「悪いなぁ、アイツ気分屋だからさ」

ロックオンも困ったように笑う。

原因が解るだけにどうしようもないのだろう。
アレルヤもつられてまた困ったように笑った。











バンッ!

自室に入るなり壁を叩くティエリア。

腹がたつ!腹がたつ!
なんでこんなにイライラするんだ!

なんでこんなに…自分の中が荒れるんだ!
この感情の振れは何だ!

荒々しい感情。
全てを破壊したくなるような。

どうにも収まりがつかなくて、枕をバシバシと叩く。

虚しくなってきて、仰向けに転がる。

何をしているんだ、僕は。

ロックオンがすぐに追いかけてきてくれない現実に、何故か涙が出る。

二人きりの時、こんな風になった時は…必ずすぐ追いかけてきて、僕の言いたい放題の文句を聞いてくれるのに。

僕より二人の方が大事なんだ…。

そう思うだけで涙が止まらない。

いやだ。
彼の側には僕だけじゃないと。

「にぃ…るぅ…」

僕だけの秘密の名前。
ロックオンの本当の名前。

まだ、彼の前で呼んだことはないけど。

涙が後から後から溢れて止まらない。

嫌だ、こんな僕はきらいだ。

ロックオンだって嫌いだろう、僕さえ、もて余すこんな僕自身なんて。

「にーるっ、にーるぅ…っ」

枕に顔を埋める。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ