三葉

□光降る朝
1ページ/2ページ


ここ2、3日の彼の様子が少しおかしい…ように思う。

何か考えているようで、ぼうっとしている。
話しかけても上の空でいつもの彼らしくない。

聞いても答えない。

僕にも言えない事なんだろうか。

チクっとした変な気持ちは、僕を何故か落ち込ませる。

僕はアナタの支えにはならないのだろうか?







ほら、まただ。

落ち込んだような雰囲気を感じるのは恐らく僕だけだろう。

巧妙に隠されてる彼の揺れ。

感情の振り幅はきっとマイスターの中でも一番大きいだろうに、彼はそれを上手く隠す。

僕の前でさえも。

「ロックオン…」

愛しい彼の名前を呼び、首に腕を巻き付け、抱きしめる。

「どうした?珍しいな?」

「甘えろと普段から言うだろう、だから甘えただけだ」

「そうか」

そう言いながら優しく笑い、僕の腕にそっと触れる。

僕ではアナタを癒せないだろうか?悩みを共有出来ないだろうか?

彼の首筋に顔を埋めると、鼻先を彼の癖毛がくすぐる。

構わず彼の香りを嗅ぐ。

「ティエリア、くすぐったいよ」

「アナタだっていつも僕にするだろう?したいんだ」

「今日は変だなぁ、ティエリア」

そう言って笑う。
















僕から誘う事は…ほとんどない。

「ティエリアっ…どうしたんだ…っ?」

「別に、僕にだって性欲があってもおかしくないっ、だろっ…あっ…っ!」

深く彼が入ってくる。
腹の奥に、とんっ、と彼が当たる。

「ひっ…あぁっ!」

びくびくっと震える、頭の中が白くなる。

ロックオンが長い彼自身をゆっくり引き抜くと、僕の中が『いかないで』とばかりに絡み付き、彼を食い締める。

「スゲー締め付け、もっとトロトロにしてやろうな」

そう言うとカリの一番太い所で、敏感な入り口を何度も責め立てる。

いやらしい、湿った音が、あられもない水音に変わる。

「いやぁっ…っ、やめっ…熱いっ」

「気持ち良くない?スゲー濡れてきたよ?やーらしい音聞こえるだろ?」

わざと大きく水音をさせて僕の中に出入りする彼。

「あっ…ふ…ぅんっ、や、やらぁ!」

ロックオンが深く、勢い良く僕を串刺しにする。

腹の奥の奥に彼が入ってくる。

とんっと当たる度に頭の中が真っ白になる。

「やぁぁ、お…おく…らめ…やらぁ!」

「あー、イイトコ当たっちゃった?絡み付くなよ、引き抜けないよ」

僕はこんなに乱れてるのに、彼は全然余裕だ。
クスクスと気持ち良さそうな顔で笑っている。
悔しい、だけど…嬉しい。

気持ち良さそうな顔をさせてるのが、自分の身体なのだと、そんな事が嬉しい。

今だけでも、辛いことを忘れて。

僕に溺れるアナタを感じて、僕は真っ白になり意識を手放した。











歌が聞こえる。

悲しそうな微かな歌声。

震えるように、途切れ途切れに。

視線を移すと、歌っているのはロックオンだった。
泣いてるのかと思うほど、悲しい空気を纏う彼。

椅子に座り、此方を背にして何やら端末を叩いている。

どこかに行ってしまいそうだ…、僕を置いて、ふと、全てをそのままにして。

怖くなって、引き留めたくて、思わず名を呼んだ。

「ロックオン…」

声が震えた。

「ん、起こしたか?悪いな」

小さな僕の声に反応して、彼が優しく笑い、振り返る。

彼は泣いてなかった。

だけど、ずきりと胸が痛んだ。

泣いててくれればいいのに、そんな泣きそうな雰囲気で、
全身に悲しい空気を纏わせて、何故貴方は無理に笑う?

僕じゃアナタを慰めることは出来ないから?
ただ、こんな事で胸が苦しくなる。

僕の側に座る彼は、喪服だった。

「どこか行ってたのか?」

「ああ、良く眠ってたからその間にな」

僕達は今、アイルランドにいる。
ロックオンが休暇をここで過ごしたいと言ったからだ。
僕は地上が好きでないので彼がいいなら、別にどこでも良かった。

「さっきの歌は…?」

何だろう?気になる。

「あ〜、昔良く聞いた歌なんだ。懐かしくて、つい…」

そう言って複雑な色を浮かべる瞳を伏せるロックオン。

じっと見つめてるとロックオンが駄目だと言ってため息をついた。

「お前に隠し事できないなぁ」

そう言い、苦笑いをする。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ