他CP

□僕と僕
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「ねぇ瀬人…」

「なに?」

「どうして僕には名前がないの?」





これは二人の子供のお話。



海馬家に住むようになってから早一年。
瀬人は自分とモクバの夢の実現のために毎日を勉学というものに費やしてきた。
唯一自由になるのは就寝前の時間だけだった。


「名前なんてあるじゃないか」

瀬人が優しく微笑む。



「僕もおまえも同じ"瀬人"だ」

その言葉に緑の髪をした少年はくしゃりと顔を歪ませた。

「でも僕は人に名前を呼ばれたことがない…」

少年はその場でしゃがみ込む。
絨毯の色が所々濃くなる。泣いているのだ。

瀬人は泣いている少年のそばに座り目を瞑って話し出した。


「じゃあ僕は名前を捨てる。今日からおまえだけが"瀬人"になるんだ」

「…そんなこと……っ!」


少年は顔をあげ、隣にいる瀬人の方を勢いよく見た。
瀬人は意地悪そうな笑みを見せると少年の柔らかい髪をくしゃくしゃとかき乱した。

「できないなら一緒に同じ名前でいようよ」





瀬人







おまえは気付いていないんだ。
僕以外にはおまえの姿は見えていないことに、

僕もおまえも母親から生まれた。

だけどおまえは肉体を持たない魂だけの姿なんだ。
僕はこの世にいる。
だけどおまえはこの世に生を受ける前にいなくなってしまった存在なんだ…

だからおまえは何も出来ない。

だけどその代わりに僕がこの世でおまえの望みを叶えてあげる。

名前も身体もあげる。



だからおまえだけはどこにも行かないで
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