月なきみそらの剣士

□ひとの追憶
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私にも記憶がある。
数えるほどだけど。



まったく何処で落としてきたのか
私にはそれくらいしか記憶が無い。



だからこれから話す私の昔話っていうのは
頼りない私の記憶と
私が頼れる人から聞いた話からできている。





























20年前。


そのころファザーンは
「戦争」をしていたようで
私はその戦闘の最前線で拾われたみたい。


そんな危ない場所に
生きている人なんてもう誰も居なかったって
ベルントが言ってた。


血まみれになって立ち尽くしてる幼い私を
彼が城に持ち帰ってくれた。


だけど私は毎日毎日
泣いてばかりだったそうで
誰も近寄せない、誰の話しも聞かない。
そんな問題児だったって聞いた事がある。


見かねて声を掛けてくれたのは
お城に仕えるメイドさん達で
当時のメイド長が私を引き取ってくれて
せっかく指導をしてくれたらしいんだけど
なんか大きな失敗をやらかしたみたいで
すぐにクビになってしまいました・・・。


その後間もなく
私は重い病にかかってしまい
何年も無駄にして・・・
私は本当にダメダメだ。


そんなダメな私に声を掛けてくれたのが
宰相になったベルントだった。


ここからは私にも記憶がある。
ベルントは私に剣の才能があるからって
自ら指導についてくれた。


その指導は・・・とてつもなく厳しかったけど
その甲斐あってか
私は並大抵の兵士と対峙しても負けないくらい
剣の腕には自信がついた。



ベルントは今でも死ぬほど厳しいから。



そして私はその腕が認められ
気が付いた時には王位継承の権利を持つ家の
護衛兼お世話役として迎えられた。




初めはハイドリッヒ家に仕えたのだけど
いろいろあって・・・今はバルテルス家、
つまりマティアス殿下の元に仕えている。

ダメダメだった私が
第1継承権を持つ殿下に仕えるなんて
なんとも考えられない出世だ。


これもすべてベルントが私を拾って助けて
育ててくれたから。


ベルントは私の親のような人だ。



貴方の大切な殿下達。
救ってくれたこの命に代えても
私は殿下達を守ると誓います。






私の人生は
貴方無しには語れない。




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