月なきみそらの剣士

□かごのそと
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「みてみて!名無し!
今度は僕が捕まえたよ!」


「だーかーら。
俺が追い込んでやったからだって」


しばらくして甲板に戻って来た二人。
エリクの腕の中にはさっきの黒猫ちゃん。
散々追い掛け回されて疲れているのか
大人しく抱かれていた。


「おい、エリク〜。
第3ラウンドはもうないからな。
こっちはもう限界だっての」


疲れきった表情のルシアは
その場でへたりこんでしまっていた。


「えー?
僕はまだ全然大丈夫なのに。
ルシア、やっぱり運動不足なんじゃない?」



まだ遊び足りないという顔をしたエリクに
「だったら名無しに遊んでもらえよ」と
キラーパスを出されてしまったけれど
私はそれを受け取らずに流しておいた。


「しかしエリク、
この猫も相当疲れているはずだぞ。
先程と違いこんなに大人しくなってしまった」


アルフレートがそう言って
黒猫ちゃんを見ようと屈んだ
その時だった。




「誰かっ!!火事だ!!!」






そう聞こえたのは貨物室の方からだった。



急に慌しくなる船内。
しかし、状況がまったくわからない。



『殿下達は此処から動かないでください!
私は様子を見てきます!』



「あ、ああ」


火が出て時間が経っていないのであれば
初期消火の段階で片付くだろう。
だけどもし、手遅れならば一刻も早く
殿下達を避難させなければならない。


私は声があった方へと急いだ。







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