BASARA短編
□右か、左か
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良い日だ。
空は快晴。雲一つなし。
寒くもなく
暑くもない。
良い具合で上陸を果し
俺は今、何処だか知らねぇ城下を歩く。
行き交う人々は俺を避ける。
俺が持つ得物のせいなのか。それとも、俺を見てなのか。
どーでもいいが
良い気分はしねぇなぁ。
そんなガラが悪いかい?
町中は好かねぇからか、
気が付けば海岸にいた。
やっぱ、落ち着くぜ。
なんて、強がる。
聞こえてくるのは海の音
と
歌声。
聴いたことのない歌だった。
何処かの民謡でもなさそうな。
切ない、愛の歌?
いつもは安心感をもたらす波の音が、
今だけ煩いと感じた。
近くでみたい。
もっと知りたい。
好奇心で動く身体は
いつの間にか彼女の顔を拝めるくらいの近さまで迫っていた。
「アニキーッ!そろそろ出ましょうぜー!」
まったく、アイツ等は空気の読めねぇ。
俺は忘れない。
この時の女の顔。
野郎ばかりに囲まれ過ぎて忘れていた感情が溢れていた。
俺はあの女に恋をした。
「風邪引くぞ、畔戸」
『政宗様・・・・いらしたのですか。』
「お前の歌声は俺だけのものだからな。お前自身もな。」
政宗は畔戸に羽織りをかけてやると包むように肩を抱いた。
「さみぃ、帰るぞ。」
『はい!政宗様』