BASARA短編

□右か、左か
1ページ/7ページ

良い日だ。


空は快晴。雲一つなし。
寒くもなく
暑くもない。


良い具合で上陸を果し
俺は今、何処だか知らねぇ城下を歩く。


行き交う人々は俺を避ける。
俺が持つ得物のせいなのか。それとも、俺を見てなのか。

どーでもいいが
良い気分はしねぇなぁ。
そんなガラが悪いかい?












町中は好かねぇからか、
気が付けば海岸にいた。

やっぱ、落ち着くぜ。
なんて、強がる。








聞こえてくるのは海の音



歌声。


聴いたことのない歌だった。
何処かの民謡でもなさそうな。
切ない、愛の歌?


いつもは安心感をもたらす波の音が、
今だけ煩いと感じた。


近くでみたい。
もっと知りたい。

好奇心で動く身体は
いつの間にか彼女の顔を拝めるくらいの近さまで迫っていた。



「アニキーッ!そろそろ出ましょうぜー!」

まったく、アイツ等は空気の読めねぇ。











俺は忘れない。
この時の女の顔。
野郎ばかりに囲まれ過ぎて忘れていた感情が溢れていた。

俺はあの女に恋をした。























「風邪引くぞ、畔戸」

『政宗様・・・・いらしたのですか。』

「お前の歌声は俺だけのものだからな。お前自身もな。」


政宗は畔戸に羽織りをかけてやると包むように肩を抱いた。

「さみぃ、帰るぞ。」


『はい!政宗様』
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ