ばさら
□蒼い鳥
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意志とは裏腹に、折れた膝。
ただ見上げた空だけが蒼く、それが醜悪な戦場に於いて酷く、綺麗だと思った。
体中が酷く重く、指先すら動かせない、否、動かない。
視界が白くぼやけていく。
合戦の騒音が、段々と遠ざかっていく。
憙、我は 死ぬ のだな
働きを終えようとしている脳髄で、元就はぼんやりとそう思った。
放っておいた刀傷も、矢傷も、思いの外自身へと負担を掛けていたらしい。
それでも、最期に主として、やらなければならないと思った。
悲鳴を上げる身体に鞭打ち、自らを囮として。
配下の者等を、無事に逃がすことを。
家臣等や、息子等は逃げ切ることが出来たであろうか。
駒と呼び続けた兵等は。
豊臣の手から無事、逃げ仰せただろうか。
今となっては分からない。
もはや起き上がる力すら、残っていないようであるから。
不様に地に伏せ、但、その時を待つだけのようだった。