staticeT

□第7話
5ページ/5ページ

セブルスはおもむろに椅子から立ち上がった。






「トイレに行ってくる」






「うん」
アリスは作り笑いを浮かべ頷いた。







アリスは、楽しそうに踊っているカップルをボーっと眺めていた。その時、アリスの肩に飲み物が降りかかった。







「あっ、ごめんなさい!」
レイブンクローの女の子が慌てた様子で言った。







「あ・・大丈夫です。気にしないで」
アリスは笑顔でそう言った。







だが、かかったのはブドウのジュースで白いファーに赤い染みができてしまった。







アリスは、急いで大広間を出た。急に何もかもが崩れ落ちたような気がして胸が苦しくなった。






アリスは、廊下にあるベンチに腰を下ろし自嘲的な笑みを浮かべた。







「馬鹿みたい・・・」









「アリス・・?」
恐る恐る声をかけたのはセブルスだった。







アリスは黙って顔を上げセブルスを見た。






「黙っていなくなるな。こんな所で何してるんだよ?」
セブルスは眉間に皺を寄せ言った。







「ファーが汚れちゃったから・・・」






「わざとやられたのか?」
セブルスは、染みを見て眉間の皺を深くした。






「違うよ。でも、もういいの」






「何がもういいんだよ?」







「最初から似合ってないし、こんなの着ても意味ない」
アリスは必死で涙を堪えながら言った。








「・・・似合ってるよ。本当に大人っぽくなっててびっくりした」
セブルスは小さな声でそう言った。







「いいよ・・お世辞なんて」







「アリスにお世辞なんて言う必要ないだろ?綺麗だ・・・すごく」
セブルスは真剣にそう言った。






アリスは嬉しさのあまり言葉を失った。







「黙っていればの話だがな」







「何それ・・ひどい!」
アリスはベンチから立ち上がり言った。








セブルスは自分の着ていたローブを脱ぎアリスの肩にかけた。アリスは突然のことに驚きセブルスを見た。







「寒そうだったんでな」
セブルスは腕を組みそう言った。







「あ、ありがとう。セブルスって、意外とジェントルマンだね」







「意外とはなんだ」
セブルスは眉間に皺を寄せ言った。







「ごめん、冗談だよ。あ、でもこれでおあいこだよね?」
アリスはクスクス笑いながらそう言った。






「ああ、そうだな。大広間に戻るか?」







「ううん。もう寮に戻ろう。やっぱりこれじゃ踊れないし」







「そうか」







アリスとセブルスはゆっくりと寮への道のりを歩いた。セブルスのローブはとても温かかった。







.
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ