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□第1話
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ドンッという鈍い音と共に、アリスの体は宙に浮いた。アリスには、全てがスローモーショーンに見えた。生温かいものがアリスの体中から溢れ出た。それは、真っ赤な血―。
「死ぬってこういうことなのかぁ・・・」
アリスは真っ白な世界でそう呟いた。
「なんとも冷静なものだな。とても十五歳には思えない」
突然男の声が響いた。
アリスは不思議そうに辺りを見回した。すると、突然目の前に黒いスーツを来た銀髪の男が現れた。
「あなたは死神?」
アリスは、男の銀色の瞳を見つめ尋ねた。
「そうだ」
「やっぱり私は死んだんだね」
「まだ死んではいない。ここは、生と死の狭間の世界」
「へえ。じゃあ、まだ生きるか死ぬか選べるってこと?私、十五年間生きてきて何もいいことなかった。友達と呼べる人も家族もいない。だから、このまま死んでもいいのかもしれない」
アリスは無表情でそう言った。
「でも、どうせ死ぬなら誰かのために死にたい。それに、やっぱり幸せってどういうことなのか知りたい」
「というと?」
死神は小首を傾げた。
「ハリー・ポッターの世界に行ってセブルスの身代わりになって死ぬの。でも、その前にセブルスと友達になって一緒に過ごしたい。馬鹿だと思うかもしれないけど・・・セブルスは私の初恋の人なの。もちろん今も大好き」
アリスはこの時初めて笑った。
「なるほど。そんなことを言ったのは君が初めてだ。面白い。その願い叶えてやろう」
死神は興味深そうにアリスを見つめ言った。
「あなた、意外と話分かるね。名前はないの?」
「イオだ」
「イオね。じゃあ、私をハリー・ポッターの世界に連れていってくれるの?本の中に・・」
「本の中ではない。こことは次元の違う世界だ」
「そうなの?・・まあ、難しいことはよく分かんないけど、私の命イオに預けるよ」
アリスはイオの目をまっすぐ見つめ言った。
「ああ。アリスの命、しばしこのわたしが預かろう」
イオは笑みを浮かべそう言った。
すると、突然アリスの目の前が真っ暗になった。
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