azalea

□第1話
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この世界には何もない。楽しいことも幸せなことも。悲しみに満ち満ちた・・・闇の世界。












日本人のわりには、色素の薄い髪と目。肩にかかる髪をさっと後ろに流し、少女はベッドの上で漫画のページをめくった。










「レン、また漫画読んでるの?何だっけ・・・パンドラ・・」
机に向かっていたもう一人の少女が言った。











「パンドラハーツだよ」
レンと呼ばれた少女は顔を上げ言った。










「いっつもそんなのばっか読んで・・ホントあんたって根暗よねぇ」
少女は馬鹿にしたように言った。











レンは何も言わず再び漫画を読み始めた。













深夜二時。隣のベッドでは同室の嫌味な少女が寝息を立てている。レンは眠れずにいた。











瞼を閉じた瞬間だった。誰かの声がレンの脳裏に響いた。














『あなたも悲しいの?淋しいの?感じるわ・・・同じ気持ちを・・』
無邪気さを感じる少女の声だった。










「誰・・?」
レンは目を開け体を起こした。











『そこにいたくないのね。私と同じ。大きな悲しみと痛みを感じながら生きてる。あなたは、心の中ではいつも泣いてるのね』












「あなた・・・もしかして・・」
レンは目を見開き呟いた。












『聞こえたの。あなたの声が。あなたにも私の声が聞こえるでしょ?』











「聞こえる。でも・・・これは夢だよね?」











『いいえ、夢なんかじゃない!』
急に声色が怒りに満ちたものへと変わった。











「どうしたの・・?」
レンは怖々とそう言った。












『大丈夫。あなたは一人じゃないわ。私と一緒よ』












レンは胸に激しい痛みを感じた。次の瞬間、全身が光に包まれベッドの中へと引きずり込まれていった。












―これは、夢?今の声はきっと彼女の声。私、とうとうおかしくなっちゃったんだ。ははは・・・。











「ははは!」
レンは自分の笑い声で目を覚ました。











目の前には、長い前髪で左目を隠し紅い右目だけでレンを見下ろしている男がいた。











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