短編。

□決意
1ページ/1ページ



俺より背が小さいあいつは
無理をしすぎだと思う。


あいつの体にはいつも傷があった。



【決意】



「火竜の咆哮!!」

敵が倒れる。
そして振り返ったあいつは傷だらけ。
そんなに強い相手じゃなかったのに
そんなに傷だらけになって、

「・・・馬鹿じゃねぇの」

ボソリと呟いたそれはあいつの耳に届いていたようだ。

「何だと!」
「馬鹿だって言ってンだ、ナツ」

馬鹿だ。
本当に馬鹿だ。

「傷、だらけじゃねぇか」

こいつはどんどん強くなって
周りの人間を護って
だから傷だらけになって

「たいした傷じゃねぇよ」

とこいつは笑う。
傷だらけになって笑う。

「馬鹿だよ、お前」
「馬鹿じゃねぇ」
「馬鹿だって!!」

傷だらけになるナツを見たくない。
護らなくていいから。

俺はナツに近寄る。
そして小さくて傷だらけの体を抱きしめた。

「ぐ、グレイ!?」

強く、でも傷つけないように優しく
ナツを抱きしめた。

「グ、レイ」

―・・・俺が護るよ。

周りの人間を護って
自分のことを護らないこいつを

「護ってやる」




end



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ