一周年フリリク

□Time!
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〜ver.光流〜


「この子の声帯に異常はありません。…いえ、既に今の状態が異常なんでしょうが、その異常の理由を科学的に説明できないんです。俗な言い方になってしまいますが、テレパシーとでも言わなければ…とても、説明できません」



愛娘へ向けられた言葉は明らかに困惑で満ちていた。
テレパシーという正気を疑いたくなるような説明しかできないことを気に病んで、申し訳なさそうに謝る医師に返す言葉を了平は持たなかった。
そして、それを聞いた娘の言葉に更に打ちのめされるような思いになった。



「(父様…もう、いい。これを治す方法なんて探さなくていい)」



頭に直接声が響く。真っ直ぐ了平を見上げる瞳は少し寂しげな色を載せ──しかし、決然と光流は言った。



「(これ以上、私の為に苦労をかけたくない。生活に困るわけでもないし、厄介なこともない)」



「だが、普通に生きるのは難しいだろう。苦労などと思ってはいない…むしろお前にそう思われることが極限悲しいぞ」



「(…ごめんなさい。でも私は、声がこのまま普通でなくともいいと思う)」



「何を言う!諦めるには早すぎるだろう!!」



光流が生まれてから五年間、ずっと治療法を探し続けてきた。この愛しい娘のためなら百年だって探し続けるつもりがある。



「お前は俺の娘で、普通に生きる権利があるのだ。親が子の幸せを願うのは当然なのだから、お前が気に病む必要もない!」



この子の声がこんな状態であることは裏社会である程度知れてしまっている。
何処かの病院から洩れたらしいが──以来、光流は折々人身売買組織やら何やらに狙われている。
了平がついているとき以外は外に出せず、友人らしい友人も作れていない。
それが決していいことでないことくらい百も承知だ。


「(私は…父様と母様と一緒にいられれば、それでいいんだが)」



光流の呟きには嬉しさを覚える。しかし、それが間違っているのもわかっている。
だから。



「そんなことを言うものではない!大丈夫だ、必ず治療法は見つけてやる!!」


誓うように了平は叫んで、小さな頭を掻き混ぜるように撫でた。



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