main

□大人
1ページ/2ページ

あなたに会うまで、
俺は大人だと思ってた。




【大人】




あれは何年前だっただろうか?
俺は副隊長になった。
東仙隊長の元で働くことに幸せを感じていた。
みなに頼られることに、嬉しさを感じていた。
俺は、もう一人でなんでもできるのだと、そう思っていた。




「頭痛いとかないか?」
「はい。」
「じゃあ見えにくいとかは?」
「雨の日は少し見えづらいです」



今俺は、技術開発局に来てる。
院生のときに虚によって傷つけられた右目。
使い物にならなくなったそれの代わりに今は義眼が入ってる。




「やっぱこんだけ時間経つといくらなんでも人工の神経じゃダメか…」




ぶつぶつ呟く阿近さんを見つめる。
もしかして痛いことすんのかな、とか思ってしまう辺り我ながら女々しい。




「ちょっと痛いかもしんねぇが我慢な」
「え、痛いんスか!?」
「いや…たぶん大丈夫。ってお前副隊長だろ、我慢しろι」
「う゛ー…」




阿近さんの手によって瞼を固定される。
目を閉じたくても閉じられないもどかしさ。
何やらレーザーのようなものを瞳にあてられた。




「こら、目ぇ閉じようとすんな」
「だって!!」
「他の神経傷つけられてえか?あ?」
「………すいませんι」




レーザーでイカれてしまった人工の視神経を焼ききるらしい。
んであたらしい人工神経を…
あれ繋ぐとき、すごく痛かった気がする。




「阿近さん。」
「あ?」
「今から神経繋ぐんですか」
「あぁ。」
「…ぃ」
「嫌だっつったら余計痛くするからな」
「なんでですか!!」




俺が痛いこと嫌いってわかってて言ってるだろこの人…!!
とはいっても視神経が繋がってないと仕事にならない。
頑張るんだ、俺。
俺は強いだろ!!




「いっ……!!」
「はい、終了」
「や、やるときは一言…!」
「言ったらお前びびるだろーが」
「うっ…」




だからっていきなりはないと思う。
痛い、ピリピリする。
見えるようになるまであと数分ってとこか?




「しっかし…修も変わんねぇな」
「え?」
「副隊長にまでなったのに痛いのが怖いなんざもっての他だろ。」
「…まぁ、そうですけど」
「とんだ我儘副隊長様だな」




そう笑った阿近さんはたぶん知ってる。
この我儘は



(俺ちゃんと任務こなしてますよ)(あぁ)(痛いのも我慢してます)(知ってるよ)





やっぱり阿近さんの前だと子供に戻る俺がいる。




-END-




NEXT→あとがき
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ