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□何年経っても愛してル
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初めて会ったのは、数も数えられない頃だった。
あの時の俺は駄々っ子で、
甘えたで、
泣き虫で…
そんな俺ももう副隊長。
好きで、好きで好きで仕方なかった。
院生の時にいれた刺青。
彼の胸元に刻み込まれた文字。
わからないながらも頭に刻み込まれた模様。
それが数字だと知ったのは霊術院に入ってから。
霊圧だけは長けていた俺は、1年の頃に基礎の基礎から叩き込まれた。
読み、書き、計算、死神について。
あの人が隊長だと知ったのは白い羽織を着ていたから。
その日から、俺の目標はただひとつだった。
あの人の側で、あの人のために生きたいと。
命を救ってくれたあなたに、命をかけて恩返しがしたいと…
でも、俺が入隊を果たしたときあなたはもういなかった。











【何年たっても愛してル】











あれからどれ程の月日が経っただろうか。
あの、絶望にうちひしがれた日。
俺の中での生きる意味は、粉々に砕け散った。
それでもあの人の面影を追いかけ鍛練し続けた。
でないと、俺が俺でなくなってしまいそうで怖かったから。
今でも俺の中心にはあの人がいて。
名前を呼ぶことのできたあの頃が酷く懐かしい。
手掛かりといえは元局長であり、元十二番隊隊長である男だけ。
そいつの居場所さえ掴めればあの人の居場所もわかるって思ってた。
でも、そんな考え浅はかだった。
俺らを裏切っただなんで、嘘だと思いたかった。
嘘だと、思ってた。
あなたと過ごした日々が、全て偽りだなんて思えなかった。
強くなれ、と。
そう言ってくれたことでさえ嘘になりそうで。
なぜあなたは、俺たちを裏切ったんですか。
なぜあなたは、死神でなくなったのですか。
なぜあなたは、俺を連れてってくれなかったんですか…?
俺の全ては、今も昔も、拳西さんだけなのに…











「私のこの眼に映るのは」

「最も血に染まぬ道だけだ」

「正義は常に其処に在る」

「私の歩む道こそが正義だ」












そしてあの時、東仙隊長までもが俺の敵になった。
浮かれていなかったと言えば嘘になる。
九番隊副隊長に任命されてから何年もの間、
彼だけが俺の尊敬の対象だった。
なのに、なぜ?
なぜ彼はまた俺の信頼を裏切るのか。
目の前で反逆者となった、揺るぎない事実。
つくづく俺は、ツいてない。
俺はこれから何を考え、何を糧に生きればいいというのか。
信頼できる部下。
本当に彼らは、信頼できるのか?
そんなことまで考えてしまう己に腹がたつ。
今の俺に、部下を信頼できなくて誰を信じられるというのか。




「…拳西さんは今、どこにいるんだろ…」




ひとり呟いた言葉は吐き出したため息と共に消え去った。
あぁ、俺もこの白のように霊子に溶け込んでしまえばいいのに。
あなたのいない世界になんて、初めから意味なんてなかったのに。




「けんせー、さん…」




なんど囁いても答えが返ってくるわけじゃない。
それでもあなたに話しかけてしまうのは


100
(あぁ、俺は)(なんて滑稽なのだろう。)




-END-




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