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□儚い恋の行方
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俺の思いは一生
あの人には届かないんだと思う。




【儚い恋の行方】




阿近さんと先輩が付き合い始めたと知ったのはごく最近。
水臭い。
なんで言ってくれなかったのかと聞けば恥ずかしかったのだそうで。




「だって…男が男を好き…なんておかしいだろ?」




そう言って俯いた先輩が忘れられない。
じゃあ、俺は?
先輩のことを好きな俺はどうなる?
あなたの恋は報われたからいいじゃないか。
男を好きになって、想いも告げられずに散る恋は。
俺の恋はどうなるんですか。
でも、そんなこと言えるはずがなくて。




「よかったじゃないスか。俺は、いいと思いますよ。」




そう言って微笑めば先輩は頬を染めた。
そんな顔を、俺に向けてほしかった。
…先輩
先輩、先輩、先輩。
それでも、あなたが好きです。




「よぉ、修。こんなとこにいたのか」
「阿近さんっ!」




途端に明るくなった顔。
染まる頬。
はにかむ唇。
それとは逆に、俺の気分は下がっていく。




「…あぁ、誰かと思えば駄犬か」
「な…!」
「阿近さんっ…!」




駄犬と言われひくつくこめかみを気遣う余裕もない。
それに慌てたようにあいつを呼ぶ先輩が疎ましい。
いや、呼ばれているあいつが妬ましい。




「…で、何の用すか」
「お前に用なんてねぇよ」
「…そーかよ」




いくら技局の人間だからといって偉いわけじゃない。
何席かなんてわかんねぇけど、隊長各ではないことは確かで。
だから実質的には俺の方が偉いわけで。
でも恋愛にはそんなこと関係なくて。
わかってはいるのに何も思い通りにならないことが腹ただしい。




「あ、阿近さん、あのっ!」
「何、お前修が好きなのか?」
「っ!」
「!!???」




驚いて阿近と呼ばれる男を見れば憎たらしい笑みを浮かべていて。
言うつもりがなかった言葉をさらりと言ってのけられたのが悔しくて。
否定しなければならないと思うのに喉がカラカラになって言葉が出ない。
グッと拳を握れば先輩はオロオロしながら俺を見ていて。
困らせたいわけじゃ、ないんだ。
困らせたいわけじゃないのに。
なのに、気付けば先輩の手を引いていた。
こんな行動に出るとは思わなかったのだろう。
驚いてる先輩の顔が目の前に広がる。
阿近さんには、キスしていると見える角度で小さく告げた。




「俺は、先輩が好きですよ」




手を離しながら先輩の真っ赤になっちまった顔に満足する。
さっきまで余裕だった阿近さんの顔が歪む。
それが楽しくてそのままもう一度引き寄せようとしたがそれはかなわなかった。




「っ、ん!?」




阿近さんが先輩を抱き寄せていた。
当然のように塞がれた唇。
触れただけで離れたそれは僅かに濡れて艶をます。




「あ、こんさ…」
「悪いな、こいつは俺のだから」




そう告げられたのになぜか頭はすっきりしていて。
拒絶の色を見せずに阿近さんにすがり付いた先輩のおかげかもしれない。




「はいはい、ごちそーさまです。」




両手を上げて降参だと意思表示すれば先輩はわけがわからないといった表情を見せた。
踵を返して歩き出した俺に先輩が叫ぶ。




「俺も、お前好きだかんなっ!」




驚いて先輩を見ればニコニコ笑っていて。
少し期待してしまった自分が情けない。
ひらひらと片手を振りながらやはり先輩にとって俺はただの後輩だったのだと思いしった。
それに寂しさを覚えつつ、喜んでる俺もいる。
好きだと告げても、まだ先輩の側にいていいのだと許してもらった気がした。
やっぱり先輩は残酷だ。
意味を理解せずに甘い言葉をはいては俺を酔わせ、突き放す。
願わくは、

(おーい、阿散井!鯛焼き買ってきたから一緒に食おうぜ!)(まじすか!?やりい!)




次の恋へ進める日はいつの日か。




-END-




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