金色の羽根
□第八話
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玄関よーし。リビングよーし。キッチンよーし。寝室よーし。書斎よーし…。
「…うん。こんなもんかな。洗濯物もさっき干したし、後は夕飯作れば終わりだ!」
掃除機を納戸にしまってからリビングに行くと、優雅にコーヒーを飲んでいる紫斗が目に入った。
この野郎…。ボクが汗水垂らして家事をしてるっていうのに、労いの言葉もないのかよ。
そんなこと期待するだけ無駄か…。
「莉羅、コーヒーのお代わり」
紫斗が座っているソファの後ろを通ると、そう言われて空のカップを渡された。
「…コーヒーぐらい自分で淹れなよ」
ボクをとことんコキ使いたいらしいな!?
「キッチンに行くんだから、ついでに淹れてくれてもいいんじゃない?」
「キッチンに行くのも紫斗の為なんですけど」
「ならついでに淹れてよ。知ってる?莉羅が学校で苛められない理由」
「え?…ううん。知らない」
な、何かいきなり話しが飛んだな。
そういや、何でだろう。別に被害に遭いたいわけじゃないけどさ…。
紫斗は頭をこちらだけ向けて、ニッコリと笑いながらカップをプラプラと持っている。
「俺が手を打たなかったら、今頃集団で苛められてたんじゃない?君、特に仲良い友達もいないみたいだし?」
…確かに。いや、最近は八乙女くんという友達が出来た。でも…ねぇ?
仮にも秋武財閥の御曹司である紫斗と、常に一緒にいる訳だし。
ボクが紫斗に取り入ろうとしているように見られているなら、他の人達にとっては邪魔な存在だろう。
こっちは、そんな気ちっともないのに…。
「…って、それって元々紫斗が原因じゃ----」
そう言った瞬間、紫斗の笑顔が一際輝いて、背筋がゾッとした。
「ん?何か言った?」
「う…ううん。何にも!」
首をブンブンと左右に振って否定する。
学校の苛めよりも、こっちの苛めの方が辛いかもしれない…。
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