対局圏(迷人戦)
□砂里町暁稲荷余話 その二
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昼時の慌ただしさを過ぎ客足が一段落着いた頃、店先に一台のバンが停まりました。
少々年季の入った車体にはこの町の外れにある、リサイクルショップの店名と電話番号が記されています。
運転席から黒い髪を後ろへと撫で付けた青年が降りるのと同時に、格子戸がカラリと開いて額傷の青年が表へと出てきました。
「やぁ、いつも助かります」
「ん、まぁ舎弟の頼みだからな。気にするなよ」
そう話しながら二人は後部のドアを開け、野菜の詰まった箱や商店名のプリントの紙袋を抱え上げます。
「あ、そうだ。今日は昼飯まだですか?」
にこやかな笑顔と共に尋ねられた黒髪の青年は、自分のお腹をチラリと見た後バツの悪そうな顔になりました。
「いや、買い出しを済ませてからにしようと思っててな」
「じゃあ、俺もこれからまかない食うところでしたから、一緒にどうですか?」
二人して荷物を運んで何往復かする間に、調理場から良い香りが漂ってきます。
最後の荷物を下ろし、バンのドアを閉め終わると額傷の青年は、暖簾を外して代わりに準備中と書かれた木札を店先に吊り下げました。