対局圏(迷人戦)

□砂里町暁稲荷余話 その二
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「ご馳走になりました。またうちの店にも寄ってやってください」

 店先でそう言って頭を下げ、乗ってきた車に乗り込んだ黒髪の青年は何やら助手席を探っています。
 そしてすぐに顔を上げると店の中へと視線を走らせました。

「あのコレ……探されていたヤツですかね?」

 辺りを軽く窺い見た黒髪の青年は隠すように抱えた紙袋を開き、半分くらい中の物を引き出します。

「同業の知り合いに当たったら割とすぐに見付かりましたよ。他にも幾つかありましたけど、結構な値が付いてるのもあったんで取り合えずリストにしときました」

 車の外の相手にそう確認を取ると、再び助手席に紙袋は戻されました。

「じゃあコレは家の方に届けておきますね。キョウヤに見付からない内においとまします」


 ブルン、とエンジンを一吹かしし走り去る車影を見送ったこの店の店主は、いつもよりほんの少しだけ急いで帰り支度を始めました。
 
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