対局圏(迷人戦)
□昔の話
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これは昔の話だそうな。
あるところに三方をぐるりと山に囲まれた国があり、その中でも一際奥まったお山には山神さまがおわしたそうな。
滅多なことではお姿を現すことはないが、山道で怪我をした者が気が付くと山裾まで運ばれていたり、お堂の供え物がそっとなくなっているのを時々見かけたんだと。
「うんうん、それから?」
「それから…」
最近はめっきり見かけなくなったかや葺き屋根の下、風通しのよい縁側ではのんびりと昔語り。
広げられた宿題ノートは朝から1ページも進んでいない。
そんなごくありふれた夏休みの一場面に、庭の玉砂利を蹴散らしながら騒々しい闖入者が現れた。