対局圏(迷人戦)
□スレイプニル交信記録
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(現在自動操舵モードで移動中です。乗員は一名。身分照会データをそちらに送ります)
準戦闘区域への立ち入り審査を滞りなく終えたのが一時間前。
事前に提出済みであった協力申請が効を奏したのか、型通りの質疑応答のみで通行パスと軍属の認可が無事発給された。
本来ならこのような手続きは申請者本人が行うべきであるが、その当人は操縦桿に突っ伏すようにして眠っている。
その様な体勢では胸部が圧迫され安静を得ることは出来ない筈なのに、一切構わずすやすやと規則的な寝息を繰り返す。
ここ数日の強行軍では、さしもの疲れ知らずのパートナーにも堪えるようだ。
目的地に着くまではこのままにしておいた方が良いだろう。
一心に眠る内に髪留め代わりのバンドがずれ、もう少しで下へ落ちてしまいそうだが、私にはそれを直せる腕が無い。
我が身の不便さを知るというのは正しく、今のこの状況であるように思う。