対局圏(迷人戦)
□蒸気機関の走る街
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昨日の出発時間ギリギリに、どうにか飛び乗った汽車が目的地に着いた。
週に二本しかない真っ白な時刻表を頭に思い浮かべ、見知らぬ土地で次の便まで足止めを喰らうのにため息をつく。
オレが請け負った任務……と言うより殆ど使い走りの内容は、依頼人から預かった荷物を無事指定先に届ける事。
今度こそは!との気負いもむなしく、特になんの危機もなくDランク任務も終わりに近付いている。
あとは手渡された指示書にある通りの場所に行って、繋ぎを取ればいいらしい。
それぞれに大きな荷物を抱えた人達がぞろぞろと降りる駅のホーム、煙で煤けた駅舎、ガタンゴトンと音を立てて開く貨車の扉。
初めて目にする物ばかりで少しだけ浮き足立つ自分を叱咤しつつ、片手に下げた預かり品を見やって改札へと向かう。
カチパチとリズムを刻みながら切符を切る駅員が、お仕事ご苦労さん、とオレの首に巻いてある額宛をちらりと見てから言ってくる。
それに笑って、オッサンもな!と返せば、前や後ろの人達からも笑いがこぼれた。
そのまま人の流れに任せて駅から出ると駅前の通りはそこそこ賑わい、出迎えの人だかりがあちこちに出来て平和な光景そのものだった。
こんな街だからこそ、名乗ったところで箔も付きやしない湯隠れの、しかもオレみたいなガキにお鉢が回ったってトコか。
そう思ってみると腹の中がモヤモヤしてくる。
「ハーァ、バカくせぇ、とっとと仕事片付けっとすっか」
腹の中の苛立ちを押し出すようにわざと声を上げ、オレは荷物を反対の手に持ち直して通りを歩き始めた。