文(伝奇物多し)

□過去を取り、去る者
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 前日から崩れ始めた天候は、日付が変わった今では雷雨となっていた。
 地面が飲み込みきれない雨水が流れを為す様は、差し詰め泥の河のように見える。
 幾日か前にこの地で行なわれた戦闘で大地は傷付き、穿たれて遥か昔の地層を晒していた場所は今、流れ込んでは溢れる土と木屑が渦巻く淵と化していた。







「カカシよ、この悪天では拙者達でもどうにもならんぞ」
「うん、そうみたいね」
「ここは一旦引き上げ、出直した方が良かろう」
「じゃあパックンは先に行って皆に伝えてくれる? オレは現場の最終確認してくるからさ」
「承知した」

 元来た方向へと駆け出す相方の忍犬を見送り、白銀の髪をした忍は、静かに印を組みチャクラを一点に収束し始める。
 白枯れて罅割れの走る巨木がかすかに軋みをたてた時、左の目を覆う額当てを掴み上げ、三つ巴の浮かぶ赤眼を空に晒した。


「写輪眼!!」
 
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