対局圏(迷人戦)
□Rings of …(仮)
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Opening
微睡みの戦場
轟火の一閃によって著しく姿を変えた平原は荒野と成り果て、疎らに生えた木々は全て薙ぎ倒されていた。
点々と散らばる幾多の戦機の残骸が黒々とした煙を上げ、命を拾った兵士達が引き上げた後の其処には、冷たくなった亡骸が取り残されているばかりである。
五時間程前に一応の停戦協定が結ばれ、最前線であった地帯は現在両軍が静かに対峙する中、救護兵団と回収部隊が全面投入された。
だが拡大した戦線の隅から隅までもはおよそ正規軍だけではカバーしきれず、本隊から離れた戦域へは軍のバッジを貸し出された雇われの救護・回収班が駆り出され、任務に当たっている。
その任務の主な目的は人命救助と速やかな戦闘停止を促すこととあるが、それも全ては冷酷な戦下の判断により、表向きの大義名分とは活動内容を異にしている。
生存者の救出は戦闘法規の遵守を世論にアピールし、また、文字通り生きた情報を敵陣営に渡すのを阻止する事になる。
それは回収班にも言えることで、再度使用可能な兵器は出来得る限り収容し、相手側へ戦力と機密が渡るのを未然に防ぐ役目を担っている。
既に本営地では第一陣の救援活動が終了し、間も無く第二陣の部隊もスタンバイから展開行動へと移行する旨がラジオから伝えられていた。
やや遅れて各戦域に散らばった回収部隊の現況報告も、大量に交信リストを積み重ねている。
その発信元は大概が大規模戦闘が行われた前線であり、停戦命令後に各個部隊が散開した先では、突発的な戦闘が未だに巻き起こっているというレポートも添付されていた。
熾火の様に燻る残骸の山からは黒煙が立ち上り、高い位置にある陽を遮って揺らいでいた。
遠くに中空を駆ける機体の識別灯が幾つも明滅し、それぞれの目的地へと飛び去って行く。
風に切り込む飛翔音も彼方へと消えたその後、新たにまた一つの機影がゆっくりと近付いて来ていた。
何かを探すように上空を行き来し、ぴたりと動きを止めるとそのまま静かに垂直降下を始める。
押し殺した様な駆動音が辺りの空気を追いやり、表層を吹き飛ばされた石だらけの窪地に飛び降りる、小さな足音をそっと包み隠した。